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何を生み出すのか 建設キャリアアップシステム
第3回 「評価」を「対価」に変える

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建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された保有資格と就業履歴で技能を評価する「建設技能者の能力評価制度」の目的とは何か―。近く、能力評価基準の第1号認定を受ける、全国鉄筋工事業協会(全鉄筋)の岩田正吾会長は「技能者の評価を対価に変えることだ」と言い切る。さらに岩田会長は「能力評価に連動する教育訓練の体制を全国に構築する必要がある」とも指摘する。岩田会長にこの制度に対する期待を聞いた。

―これまで、鉄筋工の技能はどのように評価されてきたのでしょうか。

 「親方の評価が全て。かつては、親方が技能を認めれば生産性に応じて日当を上げていた。他の職種とも連携して品質も確保できたし、現場所長も各職種の工程を差配して現場全体がうまく機能し、そのことが日本の技能をトップレベルに引き上げた」
 「ところが、建設投資が減少し、ダンピングが横行したために日当を切る方向に業界全体が向かってしまった。親方も自分のことだけで手一杯になり、それに嫌気がさして多くの技能者がこの業界を去ってしまった」

―能力評価制度は、そうした現状を変える力になり得るのでしょうか。

 「売り手市場である今変えなければ、この現状を変えることはできない。親方の評価には裁量も入るし、ばらつきも出る。元請けも親方の評価だけでは信用してくれない。発注者、元請け、技能者が納得できる、国が認定した基準が必要だ。専門工事業が元請けと価格交渉する上で基準の一つになると期待している」

―この制度をどのように価格交渉に活用するのでしょうか。

 「技能者を教育し、能力評価を行い、その評価を対価に変えるという流れになるだろう。その意味で、この制度に欠けているのは教育訓練。能力評価基準と連動する教育訓練を行うため、地域に密着した教育訓練体系を整える必要がある」
 「これから入職する技能者を地域の教育機関で訓練し、その上で初めて評価する。この教育機関で訓練を終えればレベル2の評価を受けるだとか、レベル2であれば日当はいくらもらえるといった給与のモデルプランも必要になるだろう」

―元請け側は交渉に応じるでしょうか。

 「日本建設業連合会は、優良な技能者の年収を600万円以上にする目標を打ち出しており、理解を示してくれるはず。例えば、最高位のレベル4の中でもさらに優秀な技能者を1000万円プレーヤーにすれば、技能者がそこを目指すようになる。そもそも、日本の技能者は世界でもトップレベルなのに処遇が低すぎる」
 「夢のある仕組みにしなければ、建設業に若者は入職しないし、親も子どもを建設業に入れようとは思ってくれない。その意味で、能力評価基準は専門工事業全体にとって将来の大きな財産になるはずだ」

―評価制度の運用にはCCUSへの登録が大前提になります。

 「CCUSの登録手続きが遅れているという声はあるが、1年も経てばそうした声も収まる。そんなことを言うよりも、技能者の評価を対価に変えるための元請け側との交渉を早く始めたい。企業単位で難しいこの折衝は専門工事業団体が担うことになる。評価を対価に変えなければ、CCUSを構築した関係者の努力が全て無駄になってしまう」

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