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何を生み出すのか 建設キャリアアップシステム
第5回 評価を「受注」に結び付ける

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 専門工事業の企業評価制度は、建設省(当時)が1995年にまとめた『建設産業政策大綱』でもその必要性が示されるなど、建設業界と国土交通省との間で長く議論されてきたテーマの一つだ。その専門工事業の企業評価制度が、建設キャリアアップシステム(CCUS)の構築によって、「専門工事企業の施工能力等の見える化制度」として現実のものとなろうとしている。この制度の原形にもなっているのが全国基礎工事業団体連合会(全基連、梅田巖会長)が運用している「優良・適格業者制度」だ。全基連の幸保英樹専務理事に、専門工事業の企業を評価することの意義について聞いた。


―優良・適格業者制度を構築した経緯を教えてください。

 「制度創設の契機となったのは、建設省が1998年にまとめた『専門工事業者企業力指標(ステップアップ指標)試行・検討報告書』だった。この報告書を踏まえ、企業評価制度については躯体系を中心に検討されていたが、機械施工の特色を生かした制度も構築する必要があると考え、2004年度から検討を開始。09年度から制度の運用を始めている」

―優良・適格業者制度では、専門工事企業の何を評価するのでしょうか。

 「財務状況や職員の定着率、賃金支払いなどの『経営力』と、機械所有台数や技術者・技能者数、最大請負金額などの『施工力』の指標で点数化し、High・Middle・Standard・ランク外の4段階で評価する。会員企業向けの制度で、現在は会員178社のうち94社が評価を受けている。評価は毎年更新するが、申請料は無料だ」

―この10年の運用の状況は。

 「各社の評価は、インターネット上で公表し、元請けや発注者などの利用者は、企業の所在地、工事実績、所有する建機などから検索もできる。優良・適格業者制度は、基礎工事の技術的な相談に応じる『杭工事よろず相談』と一体で運用しており、団体には公表された情報を見た発注者などから約800件の問い合わせが来ている。団体が把握しているだけでも、この制度を通じ、受注に結び付いていた案件が20件程度ある」
 「発注者・元請けから見ると、専門工事の企業情報はまだまだ少ない。そういった意味では、受注に結び付くという効果だけでなく、基礎工事業界全体のステータスを上げる効果もあったと考えている」

―国交省は、優良・適格業者制度をベースとして、見える化制度の構築を検討しています。

 「国交省は、見える化制度の目的の一つとして、不良不適格業者の排除を挙げている。この業界には『わが社は売り上げがこれだけある』とアピールしていても、下請けに仕事を丸投げしているケースが散見される。不良不適格業者を排除するという観点は重要だ」
 「ただ、やはり評価は受注に結び付くものにしなくてはならない。技能者の処遇改善や人材投資は発注者や元請けではなく、専門工事企業が行うもの。専門工事企業の経営者が技能者の賃金を引き上げられる環境をつくる必要がある」
 「企業評価を浸透させるには10年は掛かるだろう。だからこそ今やらなければいけない。優良・適格業者制度で高い評価を受けた企業の中には、評価の証明書を自社のアピールに使う企業もある。国交省の認定を受ける見える化制度は、より信用度の高いものとして、各企業の信用力を高めてくれるはずだ」

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