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何を生み出すのか 建設キャリアアップシステム
第6回 労働の見える化で生産性向上

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 建設キャリアアップシステム(CCUS)と連動した技能者と専門工事企業の評価制度を構築し、技能者の処遇改善への足掛かりをつくる一方、CCUSに登録された真正性の高い情報を現場の生産性向上に活用しよう、という動きも進んでいる。登録された技能者・事業者情報、技能者の就業履歴、現場情報などをビッグデータとして活用する環境が、API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)連携の認定を受けた外部の民間システムの活用によって整いつつある。

 建設業振興基金からAPI連携の認定を受けた民間システムは、CCUSに登録された情報を活用することで、勤務時間管理や給与計算、書類作成など、CCUS本体が持たないサービスを提供できる。

 また、民間システムに事業者が登録している技能者情報のデータをCCUSに一括で取り込んだり、現場情報と自動で連携できる。特に元請けは、二重登録の手間がなくなり、CCUSに技能者情報や現場情報を登録する事務作業の負担を軽減することもできる。民間システムを通じて就業履歴情報をCCUSに蓄積できるため、民間システムで使用するカードリーダーもそのまま使用でき、CCUS用のカードリーダーを改めて購入しなくても済む。

 これまでにCCUSとのAPI連携の認定を受けた民間システムは、東急建設の自社システムである「TcPass」、入退場する技能者の顔認証が可能な「建設現場顔認証入退管理サービス」(日本電気)、労務管理・安全衛生管理の作成・支援サイトとして最大規模の「グリーンサイト」(MCデータプラス)など七つのシステムがある。

 イーリバースドットコム(東京都江東区)が提供している施工管理支援サービス「Buildee」も、API連携の認定を受けたシステムの一つだ。Buildeeは、鹿島が現場の作業間連絡調整のために開発した「e−現場調整Pro」をベースとして、同社が開発し、17年4月からサービス提供を始めた。

 鹿島のノウハウを引き継いだBuildeeの最大の特長は、施工管理で発生する▽作業予定▽実績管理▽報告承認▽重機の管理▽帳票への出力―などをデータで管理し、現場事務の効率化を図ることだ。

 Buildeeを活用した現場では、協力会社の職長が翌日の作業予定や技能者の予定人数、作業当日には実際に作業を行った技能者数を入力。元請けの技術者は当日の作業や翌日の作業予定をシステム上で確認する。イーリバースドットコムによると、Buildeeを使用した元請けの現場技術者は1日の業務時間を2時間削減する効果があったという。

 CCUSに登録された真正性の高い事業者情報・技能者情報・現場情報を活用することで、職種別の労務状況を集計・分析することもできる。Buildeeを全ての建築現場で活用する鹿島では、職種ごとの技能者数と予定していた必要人数のデータを比較することで人手を予測し、不足が生じる場合はその対策を講じる体制を事前に整えることができているという。

 イーリバースドットコムの高橋巧社長は「現場の生産性を高めるためにさらにシステムをブラッシュアップし、より使い勝手の良いものへと付加価値を付けていきたい」と話している。

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