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何を生み出すのか 建設キャリアアップシステム
第7回 都道府県も活用開始

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 国土交通省は、8月に行った建設業4団体との意見交換で、建設キャリアアップシステム(CCUS)を公共工事の評価に活用する方針を打ち出した。公共工事でCCUS活用のインセンティブを高めて登録を促し、まず元請け企業に活用の効果を感じもらうのがその狙いだ。さらに、国交省のこうした方針に歩を合わせる格好で、地方自治体にも公共工事での評価にCCUSを活用する、独自の動きが出てきた。

 国交省は9月13日に開いた中央建設業審議会の総会に経営事項審査の審査基準改正案を報告した。建設技能者の能力評価制度で、最高位のレベル4とレベル3の技能者が所属する企業を「技術力(Z)」で加点したり、「社会性(W)」の評価項目でレベルアップした技能者が所属する企業を評価するとした。

 国交省は、経審による公共工事の入り口での評価に加え、直轄工事の現場でCCUSの効果を検証するモデル工事も実施することにしている。ただ、地域の元請け企業にその効果を感じてもらい、普及を促進するためには、地方自治体が発注する公共工事での活用も必要だ。

 国交省のこうした動きにむしろ先行する形で、山梨県は、10月1日以降に発注する土木工事の総合評価方式で、CCUSに登録した入札参加者に対する加点措置を全国で初めて実施した。当面は、入札参加者の事業者登録・技能者登録のみを評価対象とするが、県内業者にCCUS登録が浸透した段階で、元請け企業が雇用する技能者の技能レベルに応じた加点へと移行する考えだという。

 福岡県は2020年度の入札参加資格審査で、「地域貢献活動評価項目」の一つにCCUSへの事業者登録を追加し、登録した企業を加点している。

 入札参加資格審査と総合評価のいずれにも、CCUSの活用に対する加点を検討しているのが長野県だ。県が検討を始めた背景にあるのは、2014年3月に制定した「長野県の契約に関する条例」。県内業者の担い手の確保・育成などを目的に定められたこの条例の基本理念は、県が発注する工事・業務に従事する労働者の賃金を適正な水準とし、そのための労働環境を整備するとされている。

 この基本理念に従い、県は、県の契約を技能者の処遇改善につなげようと、さまざまな施策を講じている。総合評価はそうした施策の重要なツールの一つ。例えば、16年度に試行を始めた「適正な労働賃金の支払いを評価する総合評価落札方式」では、下請け次数の制限(土木2次、建築3次まで)や標準見積書での労務費の明示などを県と誓約した入札参加者を評価している。

 CCUSが目指しているのは、就業履歴と保有資格で技能を評価し、その評価に見合ったものに技能者の処遇を改善すること。「適正な賃金水準と労働環境の整備を求める条例の趣旨にも合致する」(建設部技術管理室)というのが県がCCUS活用を決めた理由だ。

 県は、有識者や県内の建設業団体なども参加する契約審議会での審議を経て、21・22年度の入札参加資格審査申請でCCUSに事業者登録し、雇用する従業員の技能者登録を済ませている企業を評価することを検討している。総合評価では、CCUSに事業者登録し、現場にカードリーダーを設置する入札参加者に対し、加点措置を講じる考えだ。

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