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何を生み出すのか 建設キャリアアップシステム
最終回 「自分事」として具体策提案を

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 建設キャリアアップシステム(CCUS)を『業界共通の制度インフラ』に育てる―。石井啓一前国土交通相は8月の意見交換会で、集まった建設業団体の幹部にそう呼び掛け、CCUS活用のメリットを高める具体策の提案を求めた。運用開始からすでに半年が経過した。建設産業には今、何が問われているのか、国交省の小笠原憲一建設市場整備課長に聞いた。

―運用開始から半年がたちました。普及の現状をどうみていますか。

 「9月末時点で登録した技能者は11万6290人。登録や現場運用に真剣に取り組んでくれている関係者にまずは感謝したい。ただ、初年度の登録目標が100万人であることを考えると、さらにこの輪を広げる必要がある。そうした中で、8月以降、一部の都道府県が公共工事への活用を決めてくれたことが、普及を加速させる契機になるのでは、と期待している」

―8月の石井前国交相と建設業団体との意見交換会にはどのような狙いがあったのでしょうか。

 「CCUSが『業界共通の制度的インフラ』であり、業界自らの提案でよりよいものにしていくことを再認識してもらいたかった。日本建設業連合会は先行して登録を進めている。全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会にも、CCUSをどう活用したいか、自分事≠ニして具体策を提案してほしい」
 「もう一つは、i−Constructionと連携した建設現場の生産性向上だ。i−ConstructionとCCUSは、建設産業の魅力を飛躍的に高め、そのことが若年層の入職を促進する可能性を秘めている。CCUSを活用すれば、施工体制や社会保険加入、建設業退職金共済などを電子データで確認できるようになる。これらをビッグデータとして活用することで、例えば労働を平準化し、処遇改善に結び付ける効果も期待できる」

―国交省は、直轄事業でモデル工事を実施する方針も打ち出しています。

 「直轄事業の発注者として、蓄積したデータを現場管理に活用するなど、CCUS活用の効果を検証するのがモデル工事の狙いだ。今のCCUSにできること、将来できることを整理し、発注者が享受できるメリットを検証してほしい」

―専門工事業の中には価格交渉力を高める効果に期待する声もあります。

 「建設技能者の能力評価制度を建設産業全体の価格交渉力の向上へとつなげることは重要。今の建設需要が落ち込んだ時に技能者の給与が落ち込まない枠組みを整える必要がある。発注者、受注者、労使が一体になり、建設産業全体で処遇を改善することができれば」

―建設分野に従事する外国人(特定技能、特定活動、技能実習)にCCUSの登録を義務付けます。

 「特定技能外国人を受け入れるに当たり、最も重視したのは受け入れによって日本人の処遇を下げないこと。CCUSに登録すれば、技能を磨き、経験を積んだ外国人も日本人と同じようにキャリアルートを描けるようになる。こうした環境を整えることが、同じ企業で働く日本人の処遇を改善することにもつながるはずだ」

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