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ZEH−マンションコンサル体験記
第5回・最終回 ユーザーに選ばれるZEHマンションとは

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 夏涼しくて冬暖かい住宅。これは皆が求める住宅の基本性能ですが、ことマンションにおいては、高断熱をアピールする広告などほとんど見かけないと思います。

 しかし、実際は「冬寒い」「結露が多い」など住んでから実感することもありますね。どんな住宅でも体感には個人差がありますので客観的な数字で比較できません。ただ、住宅購入者アンケートなどをみますと不満の上位グループに毎度断熱性が来ています。

 マンションの断熱性の特徴として、妻住戸、最上階、ピロティ上階などと、周りが住戸で囲まれている中住戸とでは断熱性が違います。

 これは外気に接する面積が多いか少ないかによって変わってくることを意味しています。したがってマンションでは住戸によって断熱性能が違ってくる為、アピールしにくい面もあると思います。

 そこでマンションのZEH化は、それらに真正面から取り組むことになります。住戸毎の断熱性能を均一化するため、不利側住戸と有利側住戸で断熱材の厚みを変えて対応するなどの工夫が必要となってきます。断熱性能の向上は、光熱費のランニングコスト削減にもつながるので、積極的にアピールできるポイントになります。

 ただ、ZEHマンションにしたから選ばれる、売れることにはなりません。それどころか、コスト増になることで売りづらくなるとの意見も多くあります。実際にZEHマンションを販売されている会社の営業担当者に聞きましても、「ZEH」だから売れた、とはほとんどないと言っておられます。では、なぜマンションのZEH化に取り組む企業が増えているのか?その背景には、省エネ・環境配慮の高まりを実現したマンションとの位置づけが目立ちます。

 2019年環境省の補正予算で中低層共同住宅レジリエンス強化型ZEHの補助が新たに予算化されました。災害時でも最低限自立できる共同住宅の普及を促す施策です。

 今後選ばれる共同住宅のひとつのカテゴリーとして「自立型マンションZEH」が選ばれる時代がくるのではと思います。

執筆者プロフィール

株式会社イエタス営業本部部長 西山 博(にしやま ひろし)

西山 博(にしやま ひろし)
株式会社イエタス営業本部部長
建築建材商社に13年間勤務した後、2007年から住宅性能評価(品確法)に特化した一級建築士事務所イエタスに勤務。17年にZEBプランナーに登録、29件のZEB案件に携わる。ZEH(またはZEH−M)については、低層10件、中層8件、高層5件、超高層1件。 モットーに「住まう人、集う人の住宅建築物の安心・安全・快適を実現する」を掲げ、未来の子供たちのために残せる住宅・建築物の省エネへの貢献を目指す。