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土木に魅せられて 〜写真家・山崎エリナの見た世界〜G覚悟を誓った。安全祈願

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2018年から福島県川俣町の復興再生道路のトンネル工事、トンネルができるまでを追いかけた。
現場では掘る抗口となる山肌を現場監督が設計図を持って見上げるところから撮影に入らせていただいたが、この時はトンネルになることすら想像もできなかった。
そして、トンネル工事が本格的に始まっていくのだが、自身のトンネル工事を撮影する「覚悟」という強い思いに突き動かされたのが安全祈願だった。
安全祈願の日は雨がしとしと降っていて、山の木々の間にトンネルの抗門の化粧木がなんとも神々しかった。
シーンと静まりかえる中、神主の祝詞が響き渡りはじめた。
一気に神聖な空気が漂い、私は近寄ることができずに、静かにシャッターを押した。
こうして工事の安全を願い、山の神さまに祈りをささげるのだと知り、「これからトンネル工事の撮影に入らせて頂きます。お許しください」と、目を閉じ祈った。
すると、雨が止みゆっくりと雲の隙間から光が差し込んできた!「あっ、山の神さまだ」と、私は撮影することのお許しをいただいたように思えた。
それからはトンネル工事に入る度に、心の中で「トンネルの撮影をさせていただきます」と、山の神さまにお許しをいただくような気持ちで撮影に挑んだ。
この経験がなかったら、トンネル工事の撮影の心構え、覚悟が違っていたと思う。
工事現場は掘るところからではなく、山の神さまに祈りを捧げるところからはじまるのだと…。
「心して入るんだぞ」と、トンネル工事に携わってきたたくさんの技術者、先人たちの命をかけた覚
悟と信念の魂の声が聞こえてくるようだった。

※この作品は6月末に発売になった写真集『トンネル誕生』に収められています。

執筆者プロフィール

写真家・ボーカリスト 山崎エリナ

山崎エリナ
写真家・ボーカリスト
兵庫県神戸市生まれ 1995年 渡仏。フランス・パリを拠点に3年間の写真活動専念する。 40カ国以上を旅して撮影。エッセイを執筆。 帰国後、国内外で写真展を多数開催、雑誌、雑誌連載、広告、 映像などで活躍。 海外での評価も高く、ポーランドの美術館Mangghaにて作品収蔵。 音楽家 坂本龍一氏、第72 回アカデミー賞にて名誉賞を受賞した映画監督アンジェイ・ワイダ氏からもその作品を高く評価された。 NHKスペシャル「世界初撮影!深海の超巨大イカ」ダイオウイカで話題なった自然番組にスチールカメラマンとして同行し深海撮影。 写真集に「Iceland blue アイスランドブルー」(学研)、「Saudade サウダージ」 (初版 ピエブックス)、「ただいまおかえり」(小学館)、「千の風 神戸から 〜天国のあの人へ〜」(学研)、「アンブラッセ 〜恋人たちのパリ〜」(ポプラ社)、「三峯神社」(グッドブックス)2019年「インフラメンテナンス 〜日本列島365日、道路はこうして守られている〜」(グッドブックス) 2020年 6月上旬「civil engineers 土木の肖像」、6月下旬「トンネル誕生」(同グッドブックス) 出版へ。 山崎エリナオフィシャルサイトhttp://www.yamasakielina.com インスタグラム elina.yamasaki oze.hinoemata.elinayamasaki