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海釣りから建設業の戦略的マーケティングを考える(3)

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 前回より、戦略的なマーケティングの第1ステップである「環境分析」を取り上げている。市場、顧客、競合などの「外部環境」と、社内のヒト、モノ、カネ、情報などの「内部環境」を分析し、SWOT分析のフレームワークを使いながら整理するプロセスを解説した。このプロセスを、具体例を釣りに例えてみよう。
 この冬、釣りに計画しているある釣り人がいるとする。彼は、キス、カワハギ、アジなど小型魚のライトタックルを得意にしており、釣り具も持っている。一方で、イカや中型〜大型魚の経験もなく、釣具も持っていない。これからの時期は、ヒラメ、マハタ、マダイ、アマダイ、カワハギ、カレイなどの魚は旬を迎え、活性も高まってくる一方、キスやメバルなどは時期ではない。また、船宿にも新型コロナウイルスの影響が迫っている。これらの状況をSWOT分析で整理してみると、表のようになる。
 次に、SWOT分析の結果から、具体的な戦略の方向性を導いていくために、整理した「強み」「弱み」「機会」「脅威」の組み合わせを検討していく。これはクロスSWOT分析などと呼ばれる手法である。例えば上記の釣り人の場合、最も常套な戦略である「強み」を「機会」にぶつける戦略を取ると、得意で自前の釣り具を活用できるライトタックルでカレイやカワハギを狙う方向性が導かれるであろう。
 このように、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の組み合わせを検討していくのであるが、中小建設業が、第一候補として検討すべき方向性は、「機会」に対して「強み」を当てていく戦略である。営業不足の多くの要因は、自社の強みとなる事業特性や設備、施工技術、施工管理能力などを把握しておらず、ニーズがある顧客に対して適切にアピールできていないことが原因であることが多い。そのため、自社の強みを明確化し、しっかりと「機会」、つまり収益性が見込め、ニーズのある市場や顧客にアピールすることが最優先なのである。

執筆者プロフィール

齋藤昭彦

齋藤昭彦
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 経営コンサルタント 齋藤 昭彦  学卒後、株式会社内田洋行入社。首都圏第2営業部にて公共・大学営業担当、のち金融営業部にてメガバンク営業担当。2014年公益財団法人さいたま市産業創造財団へ入職。創業・経営改善支援担当、医療・国際展開支援担当、オープンイノベーション推進チームリーダーなどを経て日本コンサルタントグループ入社、現在に至る。