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海釣りから建設業の戦略的マーケティングを考える(4)

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 前回までは第1ステップとして、環境分析から大きな戦略の方向性を導いていくための考え方を説明した。第2ステップとして第4回・5回では、方針から具体的なマーケティング戦略の立案について解説する。
 マーケティング戦略の立案は、市場を様々な基準で切り分け、その中で収益性が見込め、強みを活かせる市場・顧客群を選定するターゲット設定と、それに対する自社の立ち位置を定めていくポジショニングという2つの要素から構成される。
 まず、ターゲット設定について考えてみよう。これを釣りに例えると、自分の技術・経験や持っている釣り具などの条件を考慮しながら、釣れそうな魚種、釣れているエリア、釣れている船宿を絞り込んでいくというプロセスである。
 例として、ライトタックルが得意で、自前の釣り具も持っている釣り人が、釣り物を選ぶケースを想定する。冬に魚種として人気が高く、釣果も期待できるカワハギを想定した場合、関東では神奈川側で釣るのか、千葉側で釣るのか、神奈川であれば、久里浜なのか葉山なのか茅ヶ崎なのか、そしてどの船宿を選ぶのか、ということを細かく設定していくプロセスが、このターゲット設定である。
 ターゲット設定において、特に重要なポイントは「自社の強みを活かせるか」と「十分な市場規模・成長性があるか」という2点である。自社の強みが活かせなければ、競争に打ち勝つことができない。また、十分な市場規模・成長性がなければ、十分な収益をあげることができず、持続的・安定的な経営が見込めないなどのリスクが懸念される。
 このターゲット設定を間違えると、待っているのは惨憺たる結果である。昨年の7月、釣り仲間とマルイカ釣りに行った。シーズン最終盤であり、釣果も落ちていたが、先輩の強い希望で釣行に臨んだ。案の定、全員2〜3ハイというみじめな結果となり、帰宅後、妻にさんざんになじられた。まさに、市場規模・成長性を見誤った結果であった。

執筆者プロフィール

齋藤昭彦

齋藤昭彦
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 経営コンサルタント 齋藤 昭彦  学卒後、株式会社内田洋行入社。首都圏第2営業部にて公共・大学営業担当、のち金融営業部にてメガバンク営業担当。2014年公益財団法人さいたま市産業創造財団へ入職。創業・経営改善支援担当、医療・国際展開支援担当、オープンイノベーション推進チームリーダーなどを経て日本コンサルタントグループ入社、現在に至る。