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Catch-up ICT施工、普及の障壁は

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 市場に占めるシェアはわずか2%―。2020年度の直轄工事のICT施工の実績が初めて2000件を超えた一方で、市場に出回るバックホウに占めるICT対応型は2%に過ぎない。ICT施工が現場にさらに定着するためには、障壁となる通常建機との価格差を埋める必要がある。
 i−Constructionは、現場の労働力不足を生産性向上で補うために16年度にスタートした。目指しているのは、25年度までの2割の生産性向上だ。
 スタートから5年が経過し、ICT施工が生産性を高める効果も表れている。国土交通省がICT土工の受注者に行ったアンケート調査では、起工測量から電子納品までの延べ作業時間は、従来施工と比べ平均で3割縮減されたという。20年度の直轄工事での実施件数は2396件となり、初年度の16年度と比べると4倍に増えた。
 全体の実績が着実に増加する一方、ICT施工を受注できる中小建設業はまだまだ限定的だ。過去5年でICT施工を受注したことがある企業は、直轄工事(一般土木工事)のA・Bランクでは90%を超えているが、Cランクになると52・4%まで低下する。
 さらに言えば、直轄工事自体の受注実績がなく、地方自治体からの受注が大半の企業にとって、ICT施工は依然として縁遠い存在。都道府県・政令市では20年度の実施件数が合計1624件と伸びているが、市町村の小規模な発注工事ではICT施工の効果も得にくく、実績が積みあがっていない現状がある。
 国交省はこうした課題を踏まえ、まず発注者がICT施工を発注しやすい環境を整える。ドローンによる測量や中型のバックホウでの施工が困難な都市部や市街地などの現場でもICT施工が実施できるよう、22年度までに「ICT小規模土工」と「ICT床堀工」の基準類を整備。自治体が発注する小規模な現場への普及を急ぐ。
 同じ22年度には、ICT施工の受注実績のない中小建設業がICT建機を安心して選択できるよう、ICT建機の認定制度の運用も開始する方針だ。国交省が定める要件を満たすICT建機を認定し、認定を受けた建機を利用した場合、直轄工事でICT施工の受注者に求めている提出書類を簡素化するなど、インセンティブを与えることも検討している。
 通常建機に後付けで装着できるICT機器やICT施工に使用できる測量機器なども認定の対象としたい考えだ。
 国交省が受発注者向けにこうした支援措置を講じるのは、中小建設業にICT施工を定着させ、ICT建機の流通を増やし、価格低下へとつなげたいからだ。ICT建機の購入価格は、通常建機の2倍以上ともいわれる。ある建機メーカーの関係者は「現場の生産性が高まるとはいえ、マニュアル車≠倍の値段のオートマ車≠ノ切り替えてはくれない」とも話す。
 ただ、中小建設業を巻き込むことができなければ、国交省が目指す建設現場の生産性2割向上を達成することはできない。そのためにも、中小建設業への普及、ICT建機の流通量の増加、価格低下という好循環を早期に生み出す必要がある。