建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

Catch‐up 専門工事業に“念願„の企業評価制度

いいね ツイート
0

 技能者を雇用・育成し、施工能力の高い専門工事業者が選ばれる市場へ―。専門工事業にも経営事項審査のような企業評価を求める声は以前から強かったが、異なる職種に共通の評価指標を設けることが難しく、これまで専門工事業全体を網羅する制度はつくられてこなかった。この評価制度が技能者の技能レベルを判定できる建設キャリアアップシステム(CCUS)の誕生により、ようやく実現にこぎつけた。
 「専門工事企業の施工能力等の見える化評価制度」と呼ばれる企業評価制度は、2021年度から運用をスタートし、7月28日に機械土工と切断穿孔の2職種で初めて評価結果が公表された。
 申請した7社は、基礎情報(建設業許可の有無、資本金、完成工事高など)、施工能力、コンプライアンス(処分歴、社会保険加入の有無など)の3項目を4段階(☆〜☆☆☆☆)で評価され、評価結果を公表している。
 CCUSには、技能者の日々の就業履歴と保有資格が登録されている。この登録情報を基盤として、「建設技能者の能力評価制度」で技能者は技能レベルを4段階(レベル1〜4)で判定する。
 専門工事企業の見える化評価では、所属する技能者の技能レベルが問われる。各企業の施工能力の評価項目には、「所属技能者に占めるレベル3(職長クラス)以上の者の割合」があり、このほかの施工能力の評価項目にも「CCUSカードの保有者数」がある。基礎情報の真正性の確保にもCCUSの事業者登録情報を活用しており、評価を受けるためにCCUSへの登録は必須だ。
 専門工事企業の施工能力を分かりやすく明示できる一方で、企業規模の大きな企業ほど評価が高くなる傾向がある。基礎情報には資本金や完成工事高、施工能力には所属する技能者数に応じた評価項目があり、企業規模の小さな企業が「☆☆☆☆」の評価を受けるのは難しい。
 ただ、他職種に先駆けて評価結果を公表した日本機械土工協会(日機協)の保坂益男常務理事は、「☆の数が企業の評価をストレートに表すわけではない」と話す。
 日機協が策定し、国土交通省が認定した機械土工の評価基準では、「機械保有台数」を施工能力の評価項目の一つとしている。ここでは、保有台数が27台以上が「☆☆☆☆」、13台以上27台未満で「☆☆☆」、3台以上13台未満で「☆☆」、3台未満で「☆」となる。
 機械土工は、公共発注機関によって発注規模が異なり、どの発注機関の下請け受注をメーンとするかによって保有台数も自ずと異なる。日機協は、会員企業の保有台数を調査し、直轄工事の下請け受注がメーンの企業であれば「☆☆☆☆」、都道府県であれば「☆☆☆」、市町村であれば「☆☆」となるように基準を設定した。
 保坂常務理事は「☆の数ではなく、国交省の認定基準を満たす、優良な企業と証明されることに意味がある」と話す。評価を受けるメリットを高めるため、ハローワークの求人票に評価結果を記載できるようにし、求職者に評価をアピールする動きも始まっている。
 見える化評価制度の運用が始まり、技能者の処遇改善と担い手の確保というCCUSの目的を実現するための枠組みがようやく整った。人を大切にし、施工能力の高い専門工事企業が評価されてこそ、技能者の処遇改善も実現する。