建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

Catch-up 新築住宅は25年度省エネ義務

いいね ツイート
0

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の作業部会が8月に報告書をまとめ、地球温暖化が人間の影響であることには「疑いの余地がない」と指摘した。近年、自らが引き起こした気温上昇が異常気象という形となり、人間の生活を脅かしている。報告書では世界全体で2050年にカーボンニュートラルを実現できれば、気温上昇を抑制し、異常気象のリスクを低減できるとも提言している。
 政府は、昨年10月に2050年にカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言。さらに菅義偉首相は今年4月、30年度までに温室効果ガスを46%削減(13年度比)することも表明した。
 30年度の削減目標は、首相自らも「野心的」と表現する高いハードルだ。それまでの30年度の目標だった26%減を20ポイント引き上げている。その後のカーボンニュートラルの実現に向けても、あらゆる分野で対策を積み増す必要がある。
 住宅・建築物の分野では、省エネに関する規制を大幅に強化する。現行の建築物省エネ法でも、新築住宅・建築物の省エネ基準の適合義務を段階的に強化しているが、現在は延べ300平方b未満の非住宅や住宅に省エネ基準の適合義務はない(延べ300平方b以上の住宅は届出義務)。
 国土交通省・経済産業省・環境省は、省エネ基準の適合義務の対象範囲を大幅に拡大する方針を固め、今後の規制強化に向けたロードマップもまとめた。次期通常国会で建築物省エネ法を改正し、これまで基準適合を義務付けていなかった住宅、延べ300平方b未満の非住宅も義務化の対象に追加する。これにより、25年度以降、規模に関わらず全ての新築住宅・建築物で基準への適合が義務付けられることになる。
 適合を求める省エネ基準自体も厳しくする。設計段階で求められる1次エネルギー消費量の基準を段階的に引き上げ、30年度までに義務基準を住宅でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、中規模・大規模非住宅でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の水準まで高める。
 住宅・建築物への再生可能エネルギーの導入も拡大する。太陽光発電については、立地条件、日影、発電効率などの課題が指摘され、新築戸建て住宅への設置義務化は当面見送るが、将来的な設置義務化を選択肢の一つとして、30年に新築戸建て住宅の6割に導入できるよう、継続的に支援措置を講じるとした。
 さらに、25年度の省エネ基準の適合義務化を待たず、22年度から支援措置を強化し、補助金や税制によって省エネ性能の向上へと誘導する。例えば、国交省の22年度当初予算案に「住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業」として、新規事業としては異例の350億円を要求。省エネ基準に適合した新築住宅や既存住宅の省エネ改修を新たに補助する。
 住宅市場は、人口減少や新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、先行きが不透明な状況が続いている。建築価格の上昇に直結する省エネ基準の適合義務と合わせ、こうした公的支援の充実が求められる。