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「夢をかなえる 若手がやめない建設会社」   第2回 選ばれる業界へ、今が正念場

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 建設業の求人がいまだ高い水準となっている一方で、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた飲食・小売りなどの業界が求人を大きく絞っている。企業と就職先を探す高校生とのマッチングや、高卒就職者のキャリア形成支援を手掛けるハリアー研究所代表の新留英二氏は「建設業にとって、確実に潮目が変わりつつある」と話す。この機会を捉えて若い世代に就職先としての建設業界をアピールし、そして定着してもらう―。そんな未来に向けて、今が正念場だ。若手の離職を減らし、戦力となってもらうために何が必要か”高卒採用のプロ”に聞いた。
 「残念ながら、建設業を選ぶ生徒は少ない」と新留氏は現状を説明する。不人気の理由は「そもそも知られていないから」。建設系の工業高校生は別としても、高卒で就職を選ぶ生徒の大半は、建設業の仕事内容をなかなかイメージできていないのだという。
 このことが、せっかく業界に入ってくれた人材の定着率にも影を落とす。「若手が辞める一番の理由は、入社前に抱いていたイメージと現実のギャップ」だ。解決策の一つは職場見学やインターンシップ制度の拡充だが、作業中の現場に見学者を入れるのは安全確保の観点からもハードルが高い。
 それでも、秋田県のように職場見学の受け入れ実績を入札参加資格審査時の加点評価の対象とし、自治体・業界が連携して建設業のイメージ向上に取り組む例もある。「業界を挙げて若者に知ってもらう努力をするべきではないか」
 個社による入社後の手厚いフォロー体制も定着のポイントになる。「高校生の中には”とりあえず”で可能な仕事を選んで就職している」ケースがある。だからこそ、働き続ける理由や目指すべき将来像の形成を、入社後に会社が後押しする必要性を説く。「一番大事なのは、目標となる先輩というロールモデルがいるかどうか」。若手の指導役となるメンターの存在も重要な要素だ。
 資格の取得も若手が成長を実感できる機会の一つ。新留氏は「高卒で就職する生徒たちにはいわゆる貧困家庭の出身も含まれている」とし、資格取得への積極的な補助、支援を経営者に促す。普段から経営層が若手のようすに目を配り、コミュニケーションを取ることにも心掛けたい。積極的な若手への声掛けが定着に大きく影響するというのが新留氏の実感だ。
 コロナ禍の最中にあって、多くの建設企業は社会を支える基幹的な産業として事業活動を継続した。相次ぐ自然災害への対応で、建設業の社会的な存在感は増している。「建設業で働く人が”エッセンシャルワーカー”として認知されている今こそ、関心を持ってもらい、選ばれる業界に脱皮すべき。追い風を逃してはならない」(新留氏)
(東京支社=宇野木翔)