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夢をかなえる 若手が辞めない建設会社3    若者を受け入れ変化し続ける覚悟を

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 「若い人たちを中心に物事を考えていかなければならない」。幸建の山本邦夫代表取締役が20年以上若者と向き合い、確信したことだ。例えば、今の若い人たちは、電話対応ができない、コミュニケーションが下手だと言われる。しかし、それよりも「メールを打つのは早いし、デジタルに関する理解も深い」と優れた部分に着目する。「若い人たちが興味を持っていること、得意なことに常に目を配り、それらを取り入れていくことで仕事が円滑にできる」。柔軟に受け入れることが若手定着の第一歩だ。 
 若者を受け入れる同社の”本気度”を示す取り組みの一つが、入社した若手にシェアハウス(独身寮)への入居を勧めていること。寮の家賃は月2万8000円と安く抑え、駐車場やWi―Fiを完備し、米飯も食べ放題という恵まれた環境を整えている。社会に出ても「生活するのがやっとでは心が疲弊してしまう」。自立したいと考える若者をサポートし、「心にゆとりを与えるのが狙い」だという。さらに、共同生活の中でルールや協力関係を学び、悩みを相談できる仲間やコミュニティーもつくることができる。
 入社5年目の野村佳希さんは、「同年代が多いので、気軽に話し合い、相談できる。わちゃわちゃできる仲間がいるのは大きい」と話す。住居に困る若者は少なくない。定着だけでなく採用の面でも寮があることは有利だという。 
 生活面での手厚いサポートに加えて、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への取り組みが離職防止に効果を発揮していることも同社の特徴の一つ。クラウドを使った日報入力、原価管理、情報共有などの仕組みを構築中で、時間の有効活用や業務時間の大幅短縮を目指す。“ゆとり”を確保できることは、特に若者にとっては大きな魅力になるだろう。
 「建設業界は『今までのやり方で大丈夫』という固定観念が強すぎる」と山本社長は指摘する。事業環境が変化する中で「DXに取り組まないと生き残れない」ことは明らか。デジタルへの抵抗が少ない若手が潜在能力を発揮することに期待を寄せる。DXに限らず「考え方を世界標準に合わせることも必要」だとし、「これからは『地元企業だから関係ない』では通じない」と気を引き締める。若手が会社の業務体制を変え、それによって若手が定着しやすい環境が整う―そうした好循環が生まれつつある。
 山本社長は、社内に若手を増やすためには「相当な時間と労力が必要。やると決めたなら徹底的に変化し、若い人と関わり続ける覚悟を決めなければならない」と言う。次世代のために経営者、ベテランが意識を変えられるか。若手定着には「変化」する勇気が求められている。 
(中部支社=中谷聡)

株式会社幸建(愛知県春日井市)
業種 建築工事業
従業員数 25人