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「夢をかなえる 若手がやめない建設会社」  第5回 変革すべきは経営層の固定観念

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 「若者を定着させようとは思っていない」。そう語るのは岡山市で社員数35人の造園・土木会社を率いる藤田興業の早瀬丈太郎社長。とはいえ同社では、社員寮をはじめ昼食やスポーツジム利用手当てなどの福利厚生を用意し、可能な限り残業しない業務体制を構築するなど若手にとって働きやすい環境を整えている。であるならば、その真意はどこにあるのだろうか。
 高校卒業後ブラジルに渡り、サッカーの一部リーグ(当時)でプロ契約を勝ち取った。帰国後はサラリーマンを経て貿易商社を創業するなど建設業とは別のフィールドで活躍してきた。異色な経歴を持つ早瀬氏が、当時の経営層に請われ社長に就任して約10年。「経営層の意識が変わらなければ会社は良くならない」と実感している。入職者不足、人材不足は以前から予測されていた。どの業界も人材の獲得・定着に向けて必死に動いている中、建設業は古い固定観念にとらわれず抜本的な改革が必要だと新たな取り組みを始めた。
 早瀬氏が社員に望むのは「仕事にやりがいを見つけてもらうこと」。福利厚生は入職環境整備の一環にすぎない。若手が得意とするクラウドサービスやSNSなどを取り入れる。年を重ねた従業員にはドローンやIoT(モノのインターネット)技術を有効に活用し無理なく働ける現場にする。こうした改革で生まれる付加価値は会社を発展させ、武器となる。
 3年前に岡山を襲った西日本豪雨では自身も被災地の復旧に駆け付けた。地域を守る建設業の役割も十分に理解している。「復旧・復興の手助けは当然だが、どうすれば災害を未然に防げるか。社員と一緒に考えていきたい」と地域の信頼を得るための配慮も欠かさない。「そうした職場環境の中で、働き続けたいと思うかは社員の価値観であり判断。経営者としては選ばれ続ける会社でありたい」と語る。
 若手の金月宏美さんは昨年入社。教員の資格も持つ彼女は前職でさまざまな経験を積んでいた。早瀬氏はそれを生かすために社長秘書職を設け、配属した。「最初は建設の専門知識や用語など分からないことが多く不安だった」が、「今は失敗を恐れずに積極的に新しいことにチャレンジしている。やりがいのある職場」と金月さんは話し、常に一緒になって物事を考える社長に信頼を置く。そんな同社ではことし5月、岡山市の女性が輝く男女共同参画事業所としての認定も受けている。(岡山支社=久保恵一)

藤田興業株式会社(岡山市南区)
業種 造園、土木
従業員数 35人