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SDGs経営 選ばれる建設業【第2回】   地域企業の成長を後押し

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 公共工事の企業評価では、若手技術者の活用、災害協定の締結、女性技術者の活用など、入札に参加する企業の施工能力とは直接関係のない評価項目を設定することがある。例えば、地方自治体が総合評価方式の評価項目に地域の政策課題を設定すれば、政策課題の解消に加え、地域に貢献する企業の成長を後押しできる。受注者を選ぶための評価にSDGsを活用しようという、新しい動きも出てきている。
 横浜市は2020年8月、市独自の認証制度「Y−SDGs」の運用を開始した。市内に本社・支店のある企業を環境・社会・ガバナンス・地域の4分野(30項目)で審査し、全評価項目のおおむね8割以上に取り組むと「supreme(最上位)」、6割以上で「superior(上位)」、3割以上で「standard(標準)」の3段階で認証を受けられる。
 2021年4月からは、このY-SDGsの認証を受けた企業が、市が発注する工事の総合評価の加点対象になった。「supreme(最上位)」の認証で2点、「superior(上位)」で1点の加点を受けられるようになった。
 Y-SDGsの認証企業は累計305者で、「総合評価での加点の効果もあり、認証企業の7割は建設業」(温暖化対策統括本部SDGs未来都市推進課)だという。現在、評価項目の3割以上で認証が可能な「standard(標準)」は加点対象ではないが、市は「各企業がSDGsに取り組むレベルを上げ、加点対象の等級に昇格してもらうことが、SDGsを前に進めることにもなる」(SDGs未来都市推進課)というスタンスだ。認証企業の中には、認証後に上位等級に昇格している企業も少なくない。
 横浜市のように、審査を伴う認証制度ではなくても、独自の登録制度を運用している地方自治体が増えている。長野県、福井県、高知県、川崎市などでは、工事や物品の入札参加資格審査で登録企業を加点している。
 新潟県は昨年10月、県内の建設業・建設関連業を対象とした「SDGs推進建設企業登録制度」を創設した。「建設業に特化したSDGsの登録制度は全国でも初めて」(土木部監理課建設業室)だという。
 登録企業は県のホームページで公表され、登録された企業は登録マークを使用して自らSDGsの達成に取り組んでいることをアピールできる。2月中旬に決まる登録企業に公共工事でのインセンティブは当面ないが、県は登録制度によって建設業の産業イメージを変革し、担い手の確保につなげたい考えだ。
 というのも、県内の建設業の常用労働者はピーク時の56・7%と激減している。豪雪に見舞われる新潟県では、除雪を担う建設業の人手不足が県民の生活に直結する。県は「建設業が『社会貢献産業』であることが認識されていない。SDGsをツールとして、企業イメージを向上させてほしい」(監理課建設業室)と話す。