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SDGs経営 選ばれる建設業【第3回】   SDGsが『信用力』高める

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 世界的にSDGsを達成するためには、2030年まで年間5〜7兆ドルの投資が必要だとされている。SDGsの達成に向け、需要、ビジネスモデル、資金との間にある隔たりは依然として大きい。この隔たりを埋めるため、世界の金融機関や投資家が集まる国連環境計画金融イニシアティブは、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」(PIF)という考え方を提唱している。日本でも大手銀行に広がっているこのPIFを中小企業の融資にも活用しようという、国内初の試みが進んでいる。
 PIFは、企業活動が環境・社会・経済に与える影響を分析し、プラスの貢献と、マイナスの影響の緩和・低減に向け、企業の取り組みを支援する融資。貢献度の評価、モニタリング、情報開示も求められる。
 静岡銀行は2021年11月、このPIFを中小企業向けに国内で初めて導入した。県内のシンクタンクである静岡経済研究所が日本格付研究所の協力を受け、企業のSDGs達成への貢献度を評価する。この評価体制を構築したことで、自前で融資先を評価する大手行に比べ、評価コストを大幅に引き下げることができた。
 国連や環境省のガイドラインに適合した融資であるため、SDGsへの貢献度を評価された企業は高い信用力を得ることができる。従業員にもヒアリングを行うため、「SDGsに向けた従業員のモチベーションアップや社内の体制づくりにも役立つ」(ソリューション営業部法人ファイナンスグループ・鈴木達也グループ長)という。
 21年1月にスタートした同行のPIFは、11月末までに累計14件・35億3200万円の融資を実行した。このうち3件が建設業向けの融資だ。
 浜松市の総合建設業である常盤工業は昨年8月、同行からPIFによって1億円を調達し、自然エネルギーを最大限に活用した新社屋の建設費などに充てた。新社屋をモデルにサステナブル建築の普及を目指しており、「SDGsの達成が売上目標にも直結するケース」(鈴木氏)だという。
 ただ、こうした中小企業にとってのモデル的なケースばかりではない。SDGsに取り組む中小企業には『理解できない』『自信がない』『気付いていない』という三つの悩み≠ェあるという。これらの悩みは「第三者が入ると、短期的に解消できることがある」(鈴木氏)とも話す。
 PIFによって運転資金1億円を調達した日進電機(静岡市)もこうした悩みを抱えていた。もともと同社は、電気工事士など資格を持つ多くの従業員を抱えているのが強みで、従業員への資格取得支援も充実していた。これがSDGsの「4・質の高い教育をみんなに」に当たると分かったのも、PIFのための第三者による評価の成果だ。
 経営者が気付いていない中でも、実はSDGsの達成に貢献しているというケースは特に中小企業に多いという。鈴木氏は、「SDGsは本業を見直すツール。自分たちだけで悩むのではなく、第三者の視点も踏まえて取り組んでほしい」と強調している。