建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

SDGs経営 選ばれる建設業【第4回】   企業活動の理念を共有

いいね ツイート
0

 地盤改良や圧入ケーソンなどの土木工事を得意とする加藤建設(本社・愛知県蟹江町、加藤明代表取締役社長)では、約340人の社員のうち半数を越える179人がビオトープ管理士の資格を持っている。現場の環境配慮や地域とのコミュニケーションのために、2009年から社員総ぐるみで実践している「エコミーティング」の活動をきっかけに資格取得が進んだのだ。そんな加藤建設は2年前、エコミーティングや技術開発への取り組みを軸にSDGs行動宣言を行った。SDGsの目標に、これまで行ってきた企業活動を落とし込んで可視化したことが、社員の仕事への誇りの形成や会社への帰属意識の強化などにつながっているという。
 同社が13年間にわたって独自に行っているエコミーティングは、「建設業は自然を破壊するのではなく、建設業こそ自然を守ることができる」という発想でスタートした。
 取り組みはこうだ。
 まず、受注した工事の着工前に、事務職を含め複数の部署から15〜16人の社員が参加し、@自然環境配慮A地域住民配慮B地域とのコミュニティーづくり―の三つの視点で現場を調査。生物の保護や自然の保全、騒音・振動など環境対策を検討し、発注者に提案する。
 現場の状況に応じて植生や生物を調査する。その結果、絶滅危惧種や希少種を発見し、保護することがある。施工の工夫によって、河川のヨシ原復元など自然生態系を回復させることもある。さらに、生態調査の結果や環境配慮の掲示をはじめ、現場見学会や自然体験のイベントなどを通じて地域住民とのコミュニケーションを深めている。
 環境対策の活動は、同社の新卒採用にもプラスの影響をもたらしている。農学部など生物系の学部から応募してくる若者もいるという。
 また、技術開発で同社は、本社を置く蟹江町が軟弱地盤の濃尾平野に位置することから、地元の課題解決を原動力に、独自の技術である「パワーブレンダー工法(地盤改良)」や「アーバンリング工法(圧入ケーソン)」を開発した。
 これらの事業に基づくSDGs行動宣言で同社は、取り組みへの考え方として、SDGsを社会貢献ではなく、「企業活動を行うこと=SDGsの目標達成」とした。
 そして具体的な行動として、まちづくりや働き方改革への取り組みを含め5項目の行動を宣言。このうち2項目を「加藤建設としてできること」とし、SDGsの17の目標のうち『15・陸の豊かさも守ろう』に対応して「生物多様性保全活動『エコミーティング』を推進」▽『9・産業と技術革新の基盤をつくろう』と『13・気候変動に具体的な対策を』の目標に対応して「施工技術と独自技術で『強靱な国土開発・インフラ整備』を推進」―を掲げた。
 同社の石M謙一・経営企画室室長代理兼広報課長は、SDGs行動宣言を行った意義について、「グローバル・スタンダードに合致した企業活動を行っていることを会社の内外に伝えることができた。特に社員に対しては、企業理念を共有し、帰属意識を高めるインナーブランディングの醸成につながっている」と話している。