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Catch-up 遠隔臨場、原則実施に

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 国土交通省が2022年度から、通信機器を用いて段階確認や材料確認を遠隔で行う「遠隔臨場」の実施を原則化した。従来は発注者の監督職員が現場に直接出向いていたが、生産性向上のため20年度から本格的に試行。コロナ禍による移動制限、接触回避の潮流もあってその後、急速に普及した。受注者にも好評だったこともあり、適用可能な現場では原則、実施することにした。実施要領と事例集を公開しており、未経験の受注者にも活用を促していく。
 遠隔臨場では、現場で受注者が撮影した動画を発注者にライブ配信。発注者の監督職員はパソコンなどを介して現場の状況をリアルタイムで把握し、音声通話で現場に指示を出す。
 使用できるツールも急速に増えた。身に付けられる小型カメラと専用ソフトをパッケージ化したサービスや、ウェブ会議システム、施工管理システムなど多種多様だ。
 国交省の工事での適用件数は、20年度は760件、21年度には約1800件に達した。コロナ禍が特に深刻だった関東地方整備局管内では、稼働中の工事の約半数で適用。高速道路会社や水資源機構、UR都市機構などの独立行政法人、地方公共団体でも試行されている。
 国交省が導入経費を積み上げ計上したことも普及を後押しした。22年度の実施要領では、リースを基本に機器を手配し、▽撮影・モニター機器の賃料、損料▽機器の設置費▽通信費▽その他ライセンス代など―を技術管理費に計上するとした。
 受注者側の関心も高い。日本建設業連合会は21年度の国交省との意見交換のテーマに遠隔臨場の一般化を掲げ、活用拡大を要望。実績を積み重ねる中で、会員企業の6割超が「有効」と評価しているという。柔軟な日程調整が可能で、検査の時間短縮につながるとの声も寄せられている。
 ただ、山間部やトンネル内など通信環境の整わない現場での導入は難しい。コンクリート表面のできばえや掘削時の土質変化など、映像だけでは判別が困難な場合もある。
 そこで、国交省は初めてでも導入しやすいように全国30現場での活用事例集を公開。道路、河川などさまざまな現場条件、工種ごとに導入機器や遠隔で確認した項目、効果と課題をまとめた。
 地方公共団体も含めて利用が進めば、現在はばらつきのある導入費用の低減も期待できる。技術が標準化されれば、費用を率計上できるようになるかもしれない。国交省は中間技術検査など、利用する場面の拡大も検討していく。
 とはいえ、現地での確認がなくなるわけではない。対面と遠隔をいかに使い分けるかが、受発注者のコミュニケーションの質と効率を左右することになりそうだ。