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SDGs経営 選ばれる建設業【最終回】   SDGsは「本業重視型」で

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 「大企業のサプライチェーンに属していくためには、この流れに乗り遅れることはできない」。CSR/SDGコンサルタントの笹谷秀光氏は、「SDGsに取り組む発注者や大手企業の要請を『理解できない』企業はチャンスを逃し、リスク回避もできない」と強調する。中小建設業はSDGsをどのように経営に取り込むべきなのか、笹谷氏に聞いた(このインタビューはオンラインで行いました)。
 ―2015年9月の国連合意から6年がたちました。SDGsは企業の経営にどのような影響を与えてきたのでしょうか。
 「国連合意後、特に欧米の企業の反応は早かった。代表的なのはスウェーデンの通信機器メーカーであるエリクソン。国連合意から半年後の16年3月には、17の開発目標全てに担当役員を決めた。日本企業は、SDGsの解読≠ノ時間がかかったが、ここに来て経営者層の認知度が急速に高まっている」
―中小企業はSDGsをどのように経営に取り込めばよいのでしょうか。
 「SDGsは企業経営にとっての四つの要素である『ヒト』『モノ』『カネ』『情報』の全てに関わる。それだけに、SDGsをうまく活用すれば、企業価値の向上、社会貢献に対する従業員のモチベーション向上させる効果も高い。その意味では大企業、中小企業に関わらず、企業経営にとってのSDGsの重要性に変わりはない」
 「むしろ中小企業は大企業よりも意識決定が早く、SDGsに取り組む環境をつくりやすいだろう」
 ―経営者はまずどこから取り組むべきなのでしょうか。
 「まずは本業をうまく使うこと。SDGsは、本業から派生する社会貢献が求められるCSRとは異なる。本業でSDGsに取り組むとどのようなチャンスが生まれるのか、リスクは何なのか、どうすればそのリスクを回避できるのか。そういった点を考慮した『本業重視型』でSDGsを進める必要がある」
 「経営者には、手間暇を掛けても経営全体に目配りをしてもらいたい。得意分野だけを安易につまみ食い≠キるのは良くない。例えば、SDGsの目標1の『貧困をなくそう』を自社に関係ないと考える経営者がいる。しかし、この目標の中には従業員への適正な給料の支払いが含まれる。まずは経営全体を洗い出し、その中から自社の得意分野を抽出することが重要だろう」
―自社のSDGsを社会にアピールする必要もあります。
 「私はSDGsを自分ごと化≠オて発信する『発信型三方良し』という考え方を提唱している。自分良し、相手良し、世間良し、という形にするために発信は重要なキーワード。発信が同じ業界内に仲間を生み出すことにもつながるはずだ」

略歴
 笹谷秀光氏(ささや・ひでみつ)東京大学法学部卒。1977年農林省入省。農水省大臣官房審議官などを歴任し、2008年に退官。伊藤園取締役などを経て、CSR/SDGコンサルタントとして活躍。『Q&A SDGs経営』などSDGs関連の著書多数。千葉商科大学教授。