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Catch-up 住宅にも省エネ適合を義務化

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 改正建築物省エネ法が6月に成立した。改正法の柱の一つは、住宅や小規模な建築物を含めて全ての新築建物に省エネルギー基準への適合を3年以内に義務化することだ。それ以降も、省エネ基準そのものの段階的な引き上げや、建物を販売・賃貸する際の省エネ性能表示の強化を予定している。温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」(CN)を50年までに達成する目標を見据え、建築分野のさらなる省エネ化へと歩みを進める。
 建築分野は、日本のエネルギー消費の約3割を占める。政府は、50年CNに向けて、まずは30年度までに温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減する目標を掲げる。達成には新築建物の省エネ性能の向上、既設建物の省エネ改修が必須だ。
 現行制度では、中規模住宅(延べ300平方b以上)以外の建物に省エネ基準への適合義務を課している。これまで省エネ計画の届け出や省エネ性能の施主への説明のみを求めていた住宅、小規模非住宅も、法改正が施行される25年度以降は省エネ基準に合致しなければ着工できなくなる。
 19年度の新築棟数を見ると、現行で適合義務のある建物は約1万4000棟。これに対し、新たに適合義務を課す小規模非住宅と住宅は合計約44万5000棟に達する。
 ただし、19年度時点でも小規模住宅の8割以上は省エネ基準に適合している。施主の追加負担については、住宅の場合で「建設費の0・2%から0・5%程度」にとどまるというのが国交省の試算だ。
 適合申請を担う建築士の負担軽減、審査機関などの体制整備も急務となる。国交省は、省エネ計算なしで基準への適否を判定できるようにする「仕様基準」の使い勝手の改善に取り組む。工務店に対しても、断熱対策を適切に行えるよう説明会を開く。
 また、建築物の省エネ基準も、段階的に引き上げていく見通しだ。適合義務はないものの目指す対象となる「誘導基準」、事業者による自発的な取り組みを促す「トップランナー基準」も引き上げる。遅くとも30年までに、実質的に消費エネルギーをゼロにする「ZEH」「ZEB」を適合義務の対象とする。
 現在、建築士には延べ300平方b未満の住宅・非住宅の施主への省エネ基準の適否説明を義務付けている。説明を受けて、非適合から適合へと見直す施主も少なくない。25年度以降は一律に省エネ基準への適合が義務化されるため説明義務はなくなるものの、引き続き建築士が施主に省エネ対策を啓発する重要な役割を担う。
 法の施行に先立ち、22年度には国の住宅関連の補助で省エネ基準への合致を要件化。23年度からは住宅金融支援機構による融資、24年度からは住宅ローン減税でも適合が求められるようになる。
 さらに、50年CNの達成には、既存の建物も含めて省エネ性能を高める必要がある。空き家を除く住宅ストック約5000万戸のうち、外皮性能が省エネ基準を満たしているのは13%にとどまる。新築と比べて構造・コストの両面で制約が大きいことを踏まえ、財政・税制上の支援や融資制度を総動員して誘導していく。