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国土交通省 2022年度概算要求

 
 
 
  国土交通省は、一般会計の公共事業関係費として前年度比17・6%増の国費6兆9349億円を求める2022年度当初予算の概算要求を発表した。事前防災対策の重要性を考慮し、さらなる国土強靱(きょうじん)化、流域治水の本格展開を見据える他、新たな成長推進枠として2050年カーボンニュートラルなど国土交通グリーンチャレンジの実現、インフラDXの推進、地域の活性化関係の予算を盛り込んだ。21年度から25年度までの5年間に政府全体で15兆円程度の事業規模を見込む「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の22年度予算は、金額を示さない事項要求として、年末までの予算編成時に財務省と折衝する。
 事項要求では、5か年加速化対策の他、熱海市の土砂災害を踏まえた盛り土災害防止に向けた総点検の対応、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた地域公共交通・観光の確保・維持などの必要な経費についても予算編成過程で検討する。
 5か年加速化対策は、政府全体の123対策のうち国交省で53対策を重点的に取り組んでおり、21年度の事業規模は全体で4・2兆円の事業規模となっている。
 

総合政策局 建設施工のDX加速

 建設施工分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に8000万円を要求し、建設機械の遠隔化・自動化技術の導入、パワーアシストスーツの社会実装、ICT建機認定制度の創設などの経費に充てる。燃費基準達成建設機械認定制度の対象に可搬型発動発電機を追加するための調査費も要求している。
 建機の遠隔化・自動化技術の導入に向け、実証実験ガイドライン、自動化レベルの基準、ロードマップなどを検討する。中小建設業にICT施工が普及するよう、ICT建機の認定制度を創設する。
 国内産業部門のCO2排出量の1・4%を占める建機の環境負荷を低減するため、燃費基準達成建設機械認定制度の対象に可搬型発動発電機の追加を検討する。ディーゼルエンジンを代替する新たな動力源(電気、水素、バイオマス)を活用した革新的な建機の認定制度を創設するための実態調査も行う。
 
国土政策局 防災・減災対策推進費に340億
 公共事業関係費には前年度比14・1%増の963億7900万円を要求。このうち、事前防災・減災対策や再度災害防止対策などに年度途中で配分できる「防災・減災対策等強化事業推進費」に340億8200万円を求めている。
 この他、公共事業関係費には、離島振興事業と奄美群島振興開発事業として618億9900万円を盛り込んだ。
 行政経費では、新たな国土形成計画の策定を踏まえ、「デジタルとリアルが融合する地域生活圏」のモデル検証調査費と、市町村管理構想策定のモデル形成調査費に、それぞれ2500万円を新規で要求している。
 国土・地域政策の海外展開には7900万円を盛り込んだ。専門家の派遣や政府間の開発計画策定支援を通じて、国内企業の海外インフラの受注につなげる。
 

不動産・建設経済局 所有者不明土地で要求

 所有者不明土地の発生を未然に防ぐための取り組みに1億円を新規で要求し、市町村が実施する土地の実態把握や所有者不明土地の利活用手法検討のための基礎調査などに取り組む。
 所有者不明土地関係ではこの他、ランドバンク(所有者不明土地等対策推進法人)の普及へ9900万円を要求。ランドバンクの指定制度を創設するとともに、新たな仕組みを定着・普及させるための活動支援を行う。
 建設産業の働き方改革には1億6700万円を要求。地方自治体の入札契約適正化の取り組み状況を調査・公表するとともに、「平準化統一フォーマット」の普及、「平準化カルテ」の整備に取り組む。生産性向上を加速させるため、ICTツール活用での安全基準上の課題の調査・検討も行う。
 建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及・活用を通じた建設技能者の処遇改善には4500万円を要求し、女性の入職と定着などに取り組む。CCUSを活用した女性入職の優良事例の収集・創出支援、横展開を進める。
 技術検定では受験申請のオンライン化に向け、受験者データの照会や突き合わせを可能にする仕組みを検討する。
 地籍調査の推進には118億5400万円を要求。第7次国土調査事業十箇年計画に基づき、政策効果の高い地域での地籍調査を重点的に支援する他、市町村などでMMS(モービルマッピングシステム)、航空レーザー測量などによる効率的な地籍調査手法の導入を進めていく。地籍アドバイザーも派遣する。
 

都市局 都市緑化支援事業を創設

 市街地整備や国営公園整備などの公共事業関係費に前年度比19・6%増の1482億3400万円(国費)を要求した。内訳は、国営公園の整備・維持管理に344億9700万円、市街地整備に1124億7900万円、住宅対策に8億5200万円。
 都市構造再編集中支援事業(820億円)や社会資本整備総合交付金などを活用し、まちづくりのグリーン化を支援する。全国100地域を選定する「脱炭素先行地域」では、コンパクト・プラス・ネットワークと連携した事業を支援。ZEBレベルの省エネ水準を確保した建築物への補助の上限を引き上げる。
 CO2の吸収源となるグリーンインフラの整備も推進。脱炭素先行地域に整備する公共公益施設や民間建築物の屋上緑化を支援する「都市緑化推進支援事業」を創設する。
 災害発生後の早期に復旧・復興を実現するため、地方自治体の事前復興まちづくりも支援する。都市防災総合推進事業の支援対象に事前復興まちづくり計画の策定経費を追加する他、自治体の計画策定を後押しするガイドラインをまとめる。
 「スマートシティ実装化支援事業」を創設し、各地域のコンソーシアムが実施する実証実験の経費を支援する。都市全体を3次元モデルで可視化した「PLATEAU(プラトー)」については、データ整備の効率化・高度化、ユースケースの拡充などに取り組み、全国の都市に展開する。
 

水管理・国土保全局 流域治水を本格的実践

 一般会計予算への要求額1兆1331億円(前年度比16・6%増)のうち、公共事業費は18・3%増の1兆0890億円。ハード・ソフト一体の水災害対策「流域治水」を本格的に実践するとして、関連予算として7440億円を要求している。
 公共事業費の内訳は、▽治水9894億円▽海岸178億円▽都市水環境整備295億円▽下水道524億円▽災害復旧関係費429億円―となっている。
 今年5月に成立した流域治水関連法を踏まえ、「戦後最大洪水」に対応した河川整備と流域での対策を組み合わせた流域治水プロジェクトを推進する。堤防整備、河道掘削、遊水地・放水路・ダムなどの事前防災対策を計画的に実施する。
 土地利用規制を含む流域水害対策計画に基づく河川整備や雨水貯留浸透対策のハード整備に予算を重点化する。堤防決壊や越水が発生した場合、堤防の原形復旧にこだわらず、遊水地や輪中堤の整備、土地利用規制を組み合わせた復旧が選択しやすくなるよう、災害復旧制度を拡充する。
 河川管理施設などの老朽化対策には2133億円を要求。老朽化した水門、砂防設備、地すべり防止施設などについて、新技術を活用した維持管理の高度化、機能向上型更新などを取り入れ、水系全体でメンテナンスサイクルを確立する。
 

道路局 三大都市圏環状道路網など重点

 道路局関係の要求額は前年度比18・9%増の2兆4564億円。新たな成長推進枠では、道路ネットワークによる地域・拠点の連携確保に3015億円、効率的な物流ネットワークの強化に2135億円を要望。三大都市圏環状道路などの道路網を重点的に整備する。
 直轄事業の要求額は、1兆9011億円(18・9%増)で、改築その他に1兆2849億円、維持修繕に5022億円などの内訳。補助事業は5435億円(19・3%増)、有料道路事業は117億円(10・5%増)とした。
 4月に策定した「防災・減災、国土強靱化に向けた道路の5か年対策プログラム」に基づき、高規格道路のミッシングリンクの解消や、暫定2車線区間の4車線化、高規格道路と代替機能を発揮する直轄国道とのダブルネットワークの強化などを推進する。
 災害などで通行止めが長期化する渡河部の橋梁流出や河川隣接区間の道路流出といった災害リスクに対しては、橋梁・道路の洗堀・流出防止対策、橋梁架け替えなどを進める。
 橋梁修繕など老朽化対策が遅れている地方自治体については、道路メンテナンス事業補助制度を活用し、計画的・集中的な財政的支援、直轄診断、修繕代行などの技術支援を実施する。
 新たな無電柱化推進計画に基づき、無電柱化事業のスピードアップも図る。
 

住宅局 脱炭素化の支援に350億

 公共事業関係費の要求額は20・0%増の1988億9900万円。住宅・建築物の省エネ対策、木材利用、再生可能エネルギーの導入などを支援する「住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業」に新規で350億円を要求する。
 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅・建築物分野の省エネ対策を強化する。LCCM住宅、中小工務店によるZEH、長期優良住宅の整備、既存ストックの断熱改修に対する支援を強化する。
 公営住宅やUR賃貸住宅の新築時には、原則ZEHレベルの省エネ水準を求める。サービス付き高齢者向け住宅は、新築時に省エネ基準に適合することを支援の要件とする。
 改正マンション管理適正化法の2022年度の全面施行に向け、地方自治体を支援。改正マンション建て替え円滑化法の要除却認定基準に適合した老朽化マンションの再生も促していく。
 住宅・建築の業務効率化と生産性向上に向けたデジタル化も推進する。建築基準法の定期報告のオンライン化、住宅瑕疵(かし)担保履行法の基準日届出手続きの電子化を検討する他、BIMのモデル事業も引き続き支援する。
 

鉄道局 整備新幹線に804億

 公共事業関係費の要求額は前年度比19・8%増の1259億7400万円。北海道・北陸・九州の各整備新幹線に前年度と同額の803億7200万円を要求した他、北陸新幹線の敦賀〜新大阪駅の環境影響評価手続き、地質調査・概略設計などに15億3900万円の確保を目指すとした。
 都市鉄道ネットワークの充実に向け、既存鉄道網を活用した連絡線の整備に115億5800万円を要求。この他、今年7月の交通政策審議会答申を踏まえ、東京8号線(有楽町線)の延伸整備、都心部・品川地下鉄の整備に調査費を要求する。
 なにわ筋線の整備費や福岡市七隈線の延伸整備費の他、今後の国際拠点空港の需要増に対応した空港アクセス鉄道構想の事業性調査にも予算を要求している。
 防災・減災対策は、都市鉄道整備事業費補助に121億6700万円、鉄道施設総合安全対策事業費補助に149億2000万円を要求し、耐震対策、豪雨対策、浸水対策などを進める。鉄道施設に再生可能エネルギーを導入するための調査費も要求している。
 

港湾局 老朽化対策促進へ支援制度

 公共事業関係費として前年度比19・2%増の3034億円を要求した。港湾整備事業2876億円、港湾海岸事業144億円、災害復旧事業13億円の内訳。港湾施設の老朽化対策を促進するため、既存施設の統廃合や個別施設計画の見直しなどに対する支援制度を創設する。
 国際コンテナ戦略港湾の機能強化には、公共事業関係費547億円を要求。基幹航路に就航する大型船の入港を可能とするため、国際標準の水深・広さのあるコンテナターミナル整備を進める。
 港湾でのカーボンニュートラル実現に向けては、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や、臨海部産業との連携による温室効果ガス排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を目指す。
 洋上風力発電を設置するための基地港湾の整備も促進。長大な資機材の搬入ができる岸壁・荷捌き地などがある基地港湾を、能代港、秋田港、鹿島港、北九州港などで順次整備し、洋上風力発電の導入を進める。
 老朽化が進む港湾施設や海岸保全施設の修繕は予防保全型に本格転換し、ハード・ソフト両面から総合的な老朽化対策を実施する。津波災害警戒区域の指定促進のための制度も拡充する。
 

航空局 空港整備に3919億

 自動車安全特別会計の空港整備勘定の要求額は前年度と同額の3919億円。国際拠点空港では、羽田空港に481億円、成田空港に176億円、関西空港・伊丹空港に49億円、中部空港に9億円を要求している。
 羽田空港では、乗り継ぎ利便性の向上に必要な人工地盤整備の検討に着手。空港アクセス鉄道の基盤施設整備、駐機場の整備も進める。滑走路の耐震性の強化、護岸整備、航空保安施設の更新・改良も実施する。
 成田空港では、B滑走路の延伸とC滑走路の新設を引き続き支援。関西空港・伊丹空港と中部空港では、航空保安施設を更新する。
 一般空港の整備には900億円を要求し、新型コロナウイルス感染症収束後の需要回復を見据え、福岡空港の滑走路増設、那覇空港の国際線ターミナル地域再編事業、新千歳空港の受け入れ機能強化などに取り組む。
 

官庁営繕部 官庁営繕費20%増で要求

官庁営繕費として前年度比20・0%増の210億3800万円、特定国有財産整備費として52・2%増の214億0300万円を要求した。グリーン社会の実現に向け、官庁施設の老朽化対策に環境負荷を低減できる技術を採用したり、太陽光発電を導入する。
 官庁施設の防災機能の強化には98億8700万円を要求し、耐震化、天井耐震対策、津波対策などを推進する。災害応急対策の活動に必要な電力確保に向け、自家発電設備の改修、防潮板の設置、燃料槽の設置などにも取り組む。
 官庁施設の老朽化対策には111億5200万円を要求。老朽化の進行を防ぐ長寿命化事業を計画的に進める。老朽化対策に合わせ、断熱性の高い建具への改修、高効率な空調設備の導入、太陽光発電設備の導入などを進め、脱炭素化を目指す。
 

国土地理院 22年度概算要求は91億円

 国土地理院関係の2022年度当初予算案の概算要求は、前年度比2%減の91億円となった。公共測量の航空レーザ測量成果として得られた3次元点群データを活用し、3次元地図の整備を促進。地殻変動が生じた地域でも高精度測位を取得できるよう、地殻変動補正の仕組みを強化し、ICT施工や自動運転の拡大につなげる。
 要求額は前年度予算と比べると減額だが、9月1日に発足するデジタル庁に一括計上された3億8000万円を加えると、前年度予算を3%上回る。
 3次元点群データの整備には2億5100万円を要求しており、3次元データで災害時の被災状況を把握できる高精度な標高データ、デジタルツインを支える3次元地図の整備につなげる。
 国家座標に基づく地理空間情報の整備には900万円を要求する。内陸地震など複雑な地殻変動が生じた地域でも、国家座標に沿った高精度測位を行えるよう、民間電子基準点や衛星SARを使った空間分解能を向上するための技術開発を行う。
 公共測量の作業規程準則の改正には1800万円を求める。3次元地図の整備に必要な新たな技術基準を盛り込み、3次元地図を活用した社会資本整備・管理の一般化、業務の効率化などにつなげる。
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