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Catch-up <2022年6月〜7月号>

建設業に関わるトピックスを分かりやすく解説するコラム『Catch-up』バックナンバーです。
 

ICTで遠隔施工管理 専任現場の兼務可能に 2022/6/3

兼任する監理技術者等は、2現場の安全・品質を守る重い役割を担うことになる。 近年のICT技術の進展を踏まえた、建設業法に基づく技術者制度の見直し方針がまとまった。ポイントの一つは、ICTの活用を前提に監理技術者等(監理技術者、主任技術者)の2現場兼任を認めること。ウエアラブルカメラやウェブ会議システムなどが普及した現在、遠隔から現場状況を把握したり、現場とコミュニケーションを取ったりすることは一般的になりつつある。技術者不足が深刻化する中で、生産性向上に資する制度の合理化には業界も前向きだ。制度見直しには法改正が必要で、今後、事務作業を進めていく。
 見直し方針は、国土交通省の「適正な施工確保のための技術者制度検討会」(第2期)がまとめた。複数現場を兼任する場合、監理技術者等が一つの現場に対応できる時間は限られる。そこで、ICTツールや現地連絡要員を活用した遠隔での施工管理と、現場での確認・立ち会いを組み合わせた体制を打ち出した。具体的には、▽メールやクラウドサービスによる施工計画などの情報共有▽スマートフォン・ウエアラブルカメラなどのツールと連絡要員を併用した施工体制確認や立会確認▽ウェブ会議システムを介した工程会議、技術的指導―などを示した。
 その上で、兼任可能な現場として、請負金額がいずれも1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の2現場であることと、各現場が1日で巡回可能な範囲(2時間程度で移動できる距離)にあることを条件として示した。当然、一定の通信環境も備えていなければならない。
 施工体制にも条件を設ける。連絡要員は、1年以上の実務経験が必要。確実に指示の伝達や現場条件の把握ができるよう、下請け次数が3次以内であるとともに、施工体制を建設キャリアアップシステム(CCUS)などで遠隔から把握できることも求める。
 今回の見直し方針では、こうした条件を、営業所専任技術者の現場兼任(1カ所のみ)を認める際にも当てはめることとした。
 兼任可能な条件の検討に当たっては、ICTを積極的に活用している企業へのアンケート調査を実施。工事規模1億円未満を2現場までとする今回の方針は、業界の声も踏まえたものだ。同時に行ったヒアリングでは、「技術者の定着が難しい」「技術者が不足し、適正な専任配置が厳しくなっている」など深刻化する技術者不足を指摘する意見も寄せられた。
 とはいえ、兼任で技術者の労働時間が過大になってはならない。このため、方針には制度の見直しから1年程度たってから実態調査を行うことも盛った。施工管理の手法や人員配置に関する計画書を作成・保存することを求め、事後的に検証できるようにする。
 建設業においては今後も、工事規模や業種ごとに異なる実態に配慮しながら、適切な規制の在り方を考えることが重要になりそうだ。
 
 

優越Gメンが発足 コストの転嫁拒否を緊急調査 2022/6/17

「優越Gメン」は、高騰するコストの転嫁拒否に対し、立ち入り調査を含めて強い姿勢で臨む。 公正取引委員会は5月、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」を防止する「優越Gメン」を16人体制で発足させた。活動の主なターゲットの一つは、労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇分の転嫁拒否だ。「総合工事業」を含め、疑わしい事案が発生していると見込まれる22業種を対象として、6月から緊急調査を進めている。
 「優越的地位の濫用」とは、自社との取引が売上の大きな割合を占めているような事業者に対し、立場を利用して正常な商習慣から見て不当な不利益を与えることを指す。具体的には、支払いの遅延や減額などが該当。違反行為の差し止めなどの排除措置命令、課徴金の納付命令の対象となることもある。
 原材料や原油の価格の急激な高騰は、幅広い業種で価格交渉力の弱い企業の経営を追い詰めかねない。政府は昨年12月、中小企業が取引先に対してコストアップ分を適正に転嫁し、ひいては賃上げの原資を確保できるようにするため、転嫁の「円滑化施策パッケージ」を作成し、対処することとした。
 今回の緊急調査はその一環という位置付け。まずは現状を把握するため、6月3日に仕事を請ける側の事業者向けに8万通の調査票を発送した。合わせて、調査票が届いていない事業者も参加できるよう、公取委のホームページ上に回答用の特設ページを設けた。回答の提出期限は23日までとなっている。
 総合工事業の場合は、▽下請けから上位下請け▽下請けから元請け▽元請けから発注者―への価格転嫁の実態を調べる。取引価格の引き上げ要請に対してどれほど応じてもらえたかや、価格交渉の場を設けられたか、価格転嫁できない場合にきちんと理由を示されたかを質問する。
 取引価格の引き上げに応じてくれない発注者・元請けなどのうち、回答者の事業活動に与える影響の大きな上位5社の社名や法人番号も確認。具体的な転嫁拒否の事例などの情報提供も求める。受注者・下請け側が不利益を被らないように配慮した上で、調査結果を基に発注者・元請け側に対して調査票を送る。
 転嫁拒否が疑われる事案に対しては、立ち入り調査も実施。さらに、関係事業者に対して具体的な懸念事項を明示した文書を送付し、改善を促す。12月をめどとして調査結果をまとめる予定だ。
 木材や鋼材、コンクリート、塗料など建設業界でも多くの資材の価格が高騰しており、沈静化の兆しは見えない。弱い立場にある事業者が不当に不利益を被ることのないよう、「優越Gメン」の活躍に期待したい。
 
 

住宅にも省エネ適合を義務化 2050カーボンニュートラル見据え 2022/7/1

2050カーボンニュートラルという高い目標を見据え、住宅を含む全ての新築建物に省エネ基準への適合義務が課される。 改正建築物省エネ法が6月に成立した。改正法の柱の一つは、住宅や小規模な建築物を含めて全ての新築建物に省エネルギー基準への適合を3年以内に義務化することだ。それ以降も、省エネ基準そのものの段階的な引き上げや、建物を販売・賃貸する際の省エネ性能表示の強化を予定している。温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」(CN)を50年までに達成する目標を見据え、建築分野のさらなる省エネ化へと歩みを進める。
 建築分野は、日本のエネルギー消費の約3割を占める。政府は、50年CNに向けて、まずは30年度までに温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減する目標を掲げる。達成には新築建物の省エネ性能の向上、既設建物の省エネ改修が必須だ。
 現行制度では、中規模住宅(延べ300平方b以上)以外の建物に省エネ基準への適合義務を課している。これまで省エネ計画の届け出や省エネ性能の施主への説明のみを求めていた住宅、小規模非住宅も、法改正が施行される25年度以降は省エネ基準に合致しなければ着工できなくなる。
 19年度の新築棟数を見ると、現行で適合義務のある建物は約1万4000棟。これに対し、新たに適合義務を課す小規模非住宅と住宅は合計約44万5000棟に達する。
 ただし、19年度時点でも小規模住宅の8割以上は省エネ基準に適合している。施主の追加負担については、住宅の場合で「建設費の0・2%から0・5%程度」にとどまるというのが国交省の試算だ。
 適合申請を担う建築士の負担軽減、審査機関などの体制整備も急務となる。国交省は、省エネ計算なしで基準への適否を判定できるようにする「仕様基準」の使い勝手の改善に取り組む。工務店に対しても、断熱対策を適切に行えるよう説明会を開く。
 また、建築物の省エネ基準も、段階的に引き上げていく見通しだ。適合義務はないものの目指す対象となる「誘導基準」、事業者による自発的な取り組みを促す「トップランナー基準」も引き上げる。遅くとも30年までに、実質的に消費エネルギーをゼロにする「ZEH」「ZEB」を適合義務の対象とする。
 現在、建築士には延べ300平方b未満の住宅・非住宅の施主への省エネ基準の適否説明を義務付けている。説明を受けて、非適合から適合へと見直す施主も少なくない。25年度以降は一律に省エネ基準への適合が義務化されるため説明義務はなくなるものの、引き続き建築士が施主に省エネ対策を啓発する重要な役割を担う。
 法の施行に先立ち、22年度には国の住宅関連の補助で省エネ基準への合致を要件化。23年度からは住宅金融支援機構による融資、24年度からは住宅ローン減税でも適合が求められるようになる。
 さらに、50年CNの達成には、既存の建物も含めて省エネ性能を高める必要がある。空き家を除く住宅ストック約5000万戸のうち、外皮性能が省エネ基準を満たしているのは13%にとどまる。新築と比べて構造・コストの両面で制約が大きいことを踏まえ、財政・税制上の支援や融資制度を総動員して誘導していく。
 
 

ドローン登録制度がスタート 活用拡大へルール整備進む 2022/7/15

100c以上の無人航空機には機体・所有者情報の登録が義務付けられた。機体の識別情報を発信する機能も求められる。 ドローンをはじめ重量100c以上の無人航空機の機体・所有者情報の登録制度が6月20日に始まった。急激にドローンの利用が拡大する中で、航空行政を所管する国土交通省は安全を担保する制度のさらなる拡充を急ぐ。その先に見据えるのは、現在は認められていない有人地帯での目視外飛行の実現だ。
 登録制度では、所有者が機体情報(種類、製造者など)と所有者・使用者情報(氏名、住所など)を国交省のウェブサイトで入力し、機体ごとの「登録記号」を取得する。登録は3年ごとに更新が必要で、安全上問題のある機体は認められない。機体に登録記号を貼付・記載することと、機体から登録記号などの識別情報を電波で発信する機能も求められる。無登録機の飛行は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
 制度整備の背景にあるのは、利用拡大に伴う事故・トラブルの増加だ。所有者を特定できるようにすることで安全な利用を促し、ドローンの信頼性を担保する狙いがある。
 7月7日現在で登録された機体は約27万3000機に達した。登録者は個人が約11万3000人、企業などが約3万3000団体で、業務目的の利用も多い。建設分野では、ICT施工に必要な3次元測量データの取得などでドローンの活用が浸透。災害時の被災調査やインフラ点検でも注目されている。
 ただ、現行制度では、操縦者の目視範囲外の有人地帯上空を補助者なしで飛ばす「レベル4飛行」は認められていない。これを可能とするため、国交省は飛行の安全を担保する「機体認証制度」「操縦ライセンス制度」を12月にも創設する。認証を受けた機体をライセンス保有者が操縦し、必要に応じて許可・承認を得ることを前提にレベル4飛行を認める形だ。
 機体の認証は、レベル4飛行が可能な第一種と、それ以外の第二種に分かれる。機体メーカーが設計・製作段階で審査を受けていれば、使用者は機体ごとの現状検査を受けるだけで認証書を得られる。
 ドローンを飛行させるのに必要な知識・能力を証明する操縦ライセンスも、一等(レベル4飛行相当)と二等に分かれる。全国で1法人を試験機関に指定し、身体検査と学科試験、実地試験を行う。23年早期にも一等操縦ライセンスの学科・実地試験を実施したい考えだ。
 実地試験については免除規定も整備。一定の要件を満たした民間のドローンスクールを講習機関として登録した上で、そこで講習を修了すれば実地試験を免除される。
 ドローンは「空の産業革命」とも呼ばれ、企業の柔軟な発想が活用の場面の拡大に寄与してきた。安全確保を大前提とした上で、利用者が必要以上に萎縮することのないよう、規制を合理化・簡略化するさじ加減が重要になりそうだ。

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