若い人材はなぜ離職するのか(3)
1.現代の若者をどのように受け入れるか
「ゆとり世代」といわれる現代の若者の特徴として前号までは「素直で真面目、おとなしい」、「打たれ弱い」と表現したが、最後にもう一つ付け加えておきたい。
(3)自分本位、受動的
前にも述べたように新入社員研修を筆者は毎年4月に数多くこなしているが、面白い現象に気付いている。研修の講義を進める中で1時間ほど経過したところで、集中力を高める意味で筆者は、10分間の休憩時間を入れている。昭和生まれの新入社員を相手に研修を行っていた頃は、休憩時間中に数名の新入社員が私の前に歩み寄って、「ホワイトボードの文字をいったん消しましょうか?」と尋ねてくるケースが良くあった。
これに対して、平成生まれの新入社員は休憩時間中にこのように尋ねてくるのは皆無であり、休憩時間ともなると皆、一斉にスマホに興じている。筆者としては自分が板書したホワイトボードの字くらいは自分で消すのは当たり前と思っているので、何とも思わない。ただ、ゆとり世代よりも前の新入社員は「相手を思っての心配り」のできる人がそれなりにいたのだ。
今の平成生まれの新入社員も、事務局として参加している人事担当者などが新入社員に対して、「講師の先生のところに行って『ホワイトボードを消しましょうか?』と聞いてきなさい」と指示されると、すぐに私のところに歩み寄ってくるのだ。つまりは、今の新入社員は基本的にスタンスが受け身なのだ。受け身の姿勢であるがゆえに昔の流行語の“ジコチュウ(自己中心的の略語)”とは違った意味で、自分しか見えていない“自分本位”の社員が多いのだ。
ある建設会社の土木の現場で、会社に入ったばかりの高卒の新入社員に対して、現場の所長が「俺たちがやっているのを見ていろ」とだけ指示をしたら、本当に1日中、現場の作業を、ただ立って見ていただけという笑い話のようなことが現実に起きている。
次号ではこれらの点の問題解決について解説する。
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執筆者プロフィール
学卒後、日本コンサルタントグループ入社。営業本部大阪営業所長、市場開発部等を経て現在に至る。専門は建設業の営業力強化、人事制度及び人材育成支援コンサルティング、経営戦略プランニング及び軌道乗せ、各種社員教育(階層別、職種別、テーマ別)など。