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Catch-up 実現できるか「賃上げ2%」

東日本大震災以降、企業利益の増加、就業者の賃金上昇といった好循環にあった建設業が「成長」と「失速」の岐路に立たされている。2020年度の毎月勤労統計調査で、建設業の現金給与総額(事業所規模5人以上)が8年ぶりに減少。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う民間建設投資の先行き不透明感は、賃金上昇の停滞という形で表面化した。
 毎日勤労統計調査における建設業の現金給与総額は、12年度に36万6013円だったが、建設投資の増加とそれに伴う労働需給のひっ迫を受け、19年度には12年度比14・5%増の41万8968円まで上昇した。20年度は41万6024円とわずか0・6%減とはいえ、8年ぶりに減少に転じた。
 「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための5か年加速化対策」が昨年12月に決定し、今後5年間の公共投資に見通しが立った反面、コロナ禍の長期化による民間建設投資の不透明感が企業のマインドに悪影響を与えている。
 今年2月に発表された公共工事設計労務単価でも、すでにその影響は現れていた。昨年10月時点で施工中の公共工事に従事する労働者の賃金を調査した結果、地域別・職種別に2000以上ある単価のうち、42%が前年度の単価を下回った。労務単価は、13年に法定福利費の事業主負担分を計上するなど、国交省が政策的に単価を伸ばしてきた側面もあるものの、上昇基調は明らかに失速した。
 国交省は、今回の単価の下落がコロナの影響による一過性のものだとみて、前年度額を下回った42%の単価を同額に据え置く特別措置を適用。これにより、3月に改訂された労務単価は、全国全職種平均1・2%増と上昇基調を政策的に維持させた。
 翌3月30日には、国交省と建設業4団体が21年度の1年間で建設技能者の賃金上昇率を「おおむね2%以上」を目指すことで合意。行政・発注者・元請け・下請けが一体で賃金上昇の流れを維持し、労務単価の上昇、適正利潤の確保、さらなる賃金の引き上げという好循環を継続することでも一致した。
 国交省は、この合意に基づいて受注者が技能者の賃金を引き上げられるよう、まず公共工事でのダンピング対策を強化。6月15日に地方自治体に通知し、受注者が適正な利潤を確保できるよう、対策をさらに強化するよう要請した。
 この中では、低入札価格調査を行っていても、調査対象となった入札者の排除率が著しく低い地方自治体があることを問題視。こうした自治体には個別に改善を指導する考えを示した。メーカーからの見積もりを予定価格に反映する際、見積価格を根拠なく引き下げる行為を取り止めるなど、適正に予定価格を設定することも求めている。
 加えて、企業が将来の見通しを持ちながら安定的な雇用を確保できるよう、自治体に「安定的・持続的な公共投資の確保」を初めて要請した。
 ダンピングの横行、企業の利益の減少、従業員の賃金の低下という2000年代の負のスパイラルは、現在につながる担い手不足の要因にもなった。いったん賃金上昇の流れを絶やしてしまえば、建設産業がその後の10年の成長軌道を維持することはできない。

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