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Catch-up 実務経験の虚偽申請に厳罰

技術検定の受験要件として求められる実務経験年数を偽り、受験要件を満たしていない受験者の不正受験が相次いで発覚している。実務経験年数は、所属企業による証明、受験者自らの誓約によって信頼性を担保しており、この実務経験を偽る不正受験は、性善説に立ち、受験者からの自己申告で成り立つ技術検定制度の根幹を揺るがしている。
 一連の不正受験はどのように行われたのだろうか。施工管理技士資格を持つ社員357人(退職者含む)に実務経験の不備が見つかった大和ハウス工業は、20年4月に外部調査委員会の報告書を公表している。
 この報告書によると、同社には、資格取得時の祝い金の支給といったインセンティブの他、資格取得(2種目)を管理職への昇格要件にするなど、「資格取得への意識が高い企業文化」があったという。ただ、本来は実務経験として認められない他工種の実務経験を重複してカウントしていたり、自らの記憶と照らし合わせて実務経験を申告するなど、社内体制の不備が300人を超える社員の不正取得につながったとしている。
 一方、東レ子会社の水道機工は、会社として不正を後押していた事実が明らかになっている。同社の役員(当時)が実地試験の記述式の問題に実際には経験していない実務経験の記載方法や、試験機関に対する不正の発覚防止策を指導していた。また、西武建設は、経営事項審査への加点を目的として、実務経験のない事務系職員に資格取得を指示・推奨していたことが分かっている。
 国土交通省は、不正受験が立て続けに明るみにでたことを重くみて、不正受験を防止するための有識者会議を設置。この会議は昨年11月までに申請ミス防止や虚偽申請の抑止を柱とする再発防止策を提言。この中では、建設業法上の監督処分の厳格化も求めた。
受験要件である実務経験がなく、不正に資格を取得した施工管理技士は、主任技術者・監理技術者や営業所専任技術者の要件も満たさないため、所属する企業が建設業法違反を問われる。現行の監督処分基準では、不正に資格を取得した技術者を現場に配置した企業は、主任技術者・監理技術者の不設置とみなされ、15日以上の営業停止になる。 
有識者会議の提言を受け、7月中に改正される監督処分基準では、技術検定の受験時に虚偽の実務経験を申請し、不正に資格を取得した技術者を「1度でも」現場に配置すると、営業停止期間を現行基準の2倍に当たる30日以上にする。仮に不正に資格を取得した技術者を「複数」の現場に配置した企業は、営業停止をさらに1・5倍の45日以上とすることもできる。
 受験者本人に対する処分も厳罰化する。悪質な虚偽申請だけでなく、申請内容の記載ミスなどでも1年間の受験禁止措置を適用。所属企業に社内のチェック体制を強化してもらう狙いもある。
 建設業法では、建設工事の品質を確保するため、建設業者が組織として持つ技術力と技術者個人の技術力を求めている。技術者個人の技術力は、現場の応用能力が身に付く実務経験を重視する。
 技術検定の再編により、実務経験の少ない技術者が「技士補」を取得できるようになった。若手技術者が現場で活躍できる環境を整える今だからこそ、業界全体が襟を正す必要がある。

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