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「夢をかなえる 若手がやめない建設会社」   第1回 入職後も助走期間、長い目で

高校を卒業して建設業に入職した若者の約半数が3年以内に離職する―。建設企業が直面する厳しい現実だ。業界を挙げて給料・休暇・希望の「新3K」や働き方改革の推進に取り組んでいるものの、3年後離職率はいまだ製造業をはじめ他産業の水準よりも高い。こうした現状について、埼玉県立大宮工業高校の進路指導部主事を務める吉城守氏は「入社後もしばらくは助走期間。長い目で見て育てることが重要だ」と指摘する。建設業に入職する若者の”気質”にも変化が見られる現在、若手をいかに育成し、定着してもらうかは業界の将来を左右する大きな課題となっている。
 「今までとは違う育て方が必要になる」。吉城氏は、最近の卒業生の就職先の企業に対しこう伝えている。背景にあるのは、工業高校で建設系の学科を選択する生徒らの変化だ。かつてのやんちゃなイメージは影を潜め、代わっておとなしいタイプが増えているのだという。「怒鳴って教える」「背中を見て覚える」という昔ながらの徒弟的な指導手法は通用しない。その反面、コツコツまじめな気質は丁寧な教育との相性がいいと見る。
 そこで重要になるのが、若手の指導にあたるメンターの心構えだ。経験年数を積み、資格取得により給与水準を上げる建設業では、「最初の数年に乗り越えるべき”壁”がある」と吉城氏は説く。最も身近な先輩社員が、キャリアを重ねた将来のモデルを見せることができれば、その意義は大きい。
 そもそも、サラリーマン家庭の増加を背景に、建設現場で働く家族、親族を持つ人は同校の建築科の生徒ですら減ってきている。入職前のインターンができれば理想的だが、入職後も先輩の姿を通して「じっくりと具体的な仕事のイメージを形成することが必要ではないか」(吉城氏)。
 もちろん、休日の確保は大前提と言える。「4週8休は難しくとも、せめて6休は確保しなくては」というのが、吉城氏が生徒と接して得た実感だ。特に、他産業との給与水準に差がつきにくい入職後3年目くらいまでの時期に「年間休日120日」が当たり前の製造業との落差に気づき、建設業界を去る若手が出ているであろうことは想像に難くない。
 そもそも、建設業の求人倍率は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行という未曾有(みぞう)の事態にあっても極めて高い。同校生徒への20年度の求人は、全体では1割減ったが、建設業に限ってはわずかながら増加し、倍率は25倍に達したという。厚生労働省の調査でも同様の傾向だ。
 人口減少の進展に伴い、若手は一層貴重な存在となっている。ある大手ハウスメーカーは入職後2年間、会社負担で専門学校に通わせて資格取得を支援する教育プログラムを開始した。若い力の争奪戦は、産業間だけでなく、建設業界内でも厳しさを増している。
 ただ、「地元志向、安定志向が強い」のも近年の若手の特徴だと吉城氏は見る。核家族化が進み、自宅から通える職場を探す生徒も少なくない。地域に密着して経営し、将来にわたって安心して働ける環境を提示できれば、地域建設業も魅力的な職場となるのではないか。若手が次の世代のモデルとなり、さらなる入職・定着を促す―。そんな好循環を実現できるか否かは、経営者、メンターが若手を積極的に理解し、支える「本気度」にかかっていると言えそうだ。
(東京支社、宇野木翔)

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