Catch-up 老朽化対策はどう進んだ?|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞
建通新聞

ログイン

伊賀市役所

Catch-up 老朽化対策はどう進んだ?

2012年12月2日、中央道笹子トンネルの換気ダクトに設置されていた天井板の崩落により、9人の尊い命が失われた。インフラの老朽化の実態を社会全体に知らしめることになったこの事故が発生し、今年で10年目を迎えた。
 笹子トンネル事故が発生した12年度の公共事業費(12年度当初予算)は、政府全体で4・6兆円。公共事業費がピークだった1997年度の9・8兆円と比べると、半分以下に落ち込んでいた。インフラの維持管理予算も抑制され、管理水準も低下していた恐れがある。
 また、公共事業費の使途をまずは「新設」に振り向けるそれ以前の意識が色濃く残り、老朽化対策や維持管理がおろそかになっていたことは容易に想像できる。
 事故発生の直後に発足した第2次安倍内閣で、国土交通相に就いた太田昭宏氏は、翌13年を『メンテナンス元年』と位置付け、インフラの老朽化対策を計画的、戦略的に進める姿勢を示した。
 国交省は14年7月、全ての道路管理者に対し、道路橋とトンネルの定期点検と診断を義務化。当時、技術職員が不足する地方自治体からは、遠望目視や点検頻度の緩和を求める声もあったが、国交省は「近接目視」と「5年に1度の定期点検」とする姿勢を貫いた。
 その一方、国交省は人手や予算が不足している自治体を支援するため、ドローンなどの新技術の現場実装にも着手した。高所作業が伴う橋梁の点検は、足場を組んだり、通行規制を実施して点検車両を用意する必要がある。ドローンを活用すれば足場や通行規制は必要なく、ドローンが撮影した画像で損傷を確認できる。
 5年周期の定期点検の一巡を待ち、国交省は19年2月に定期点検要領を改定し、ドローンなどを点検に活用できるようにした。「点検支援技術」として同省が認めている技術は、21年10月までに131技術に上っている。
 新技術を活用するための環境整備が進んだ結果、インフラの点検・診断に新技術を導入している施設管理者は、19年度の35%から21年度に46%まで伸びた。
 ただ、市町村の導入状況を見ると、人口50万人以上の市では新技術の導入率が76%と高い水準にあるのに対し、人口規模が小さくなるほど導入率が下がっている。人口1万人未満の町村で見ると、導入率は28%まで落ちる。
 人口規模の小さい市町村ほど新技術のニーズは高いはずだが、技術職員数が少ないために技術の有効性を判断できなかったり、新技術を使いこなせる委託先がない、といった課題があるという。
 さらに言えば、点検・診断によって補修や修繕の必要性が分かっても、十分な予算がないために対策工事の実施が遅れているケースもある。点検・診断だけでなく、補修・修繕工事を効率化するための新工法・新材料の導入も急務だ。

いいね 0 ツイート

執筆者プロフィール



人と建設と未来ラボ3
スマホ記事中バナーC
あなたの知識やノウハウなどを建通新聞社ホームページで伝えてみませんか?
電子版のお申し込みはこちら 新聞(宅配)のお申し込みはこちら
カタログカタログ