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Catch-up 労務単価 10年連続増加?

公共工事設計労務単価の改定の2022年の時期が近づいている。労務単価は、13年から21年まで9年連続で上昇。12年に1万3072円だった全国全職種平均は21年には2万0409円となり、この間で53・5%伸びている。それまで下落を続けてきた労務単価が2万円台まで上昇した現在の姿は、どのようにつくられたのだろうか。
 労務単価を算出するため、国土交通省と農林水産省は全国の公共工事に従事する技能者の賃金を毎年調査する。無作為に抽出される調査対象は、毎年10万人以上に上る。労務単価が賃金の実態を反映しているとされているのは、この大規模な調査をベースに職種別の単価を設定するためだ。
 1997年に初めて公表されて以降、公共投資額の減少とダンピングの横行、それに伴う賃金の低下は労務単価に直接反映され、11年まで一貫して下落。全国全職種平均の単価は1万3047円と公表後最低を記録した。
 転機となったのは13年3月の改定だ。すでに前年の12年3月の改定時には、公表後初の単価上昇を記録していたが、13年3月には15・1%増と記録的に上昇した。
 当時は、国交省が建設業の社会保険加入対策に着手した直後で、これまで単価に盛り込まれていなかった法定福利費の個人負担分を上乗せした。さらに、技能者不足によって全国に広がっていた入札不調の発生状況に応じた補正も適用した。
 こうした政策的な措置が公共投資の増額や労働需給の逼迫(ひっぱく)感とも重なり、労務単価は長期間にわたり上昇。単価の上昇によって予定価格が増額され、それが企業の請負価格の増額、技能者の賃金上昇につながり、翌年の労務単価も上昇する、というプラスの流れが出来上がった。
 「労務単価の上昇に技能者の賃金上昇が追いついていない」という指摘は根強くあるものの、労務単価が技能者の賃金上昇の原動力の一つになっていたのは間違いない。
 ただ、昨年公表された労務単価はそれまでと異なっていた。2000以上ある単価の42%が前年度を下回り、国交省はこの傾向が新型コロナウイルス感染症の影響による一過性のものだとして、マイナスの単価を前年度と同額に据え置く特別措置を適用。ただ、全国全職種の平均単価は1・2%増と特別措置を適用してもなお13年以降で最低だ。
 単価上昇の停滞に危機感を持った国交省は、建設業団体と建設技能者の賃金上昇を目指すことで合意。単価の下落につながるダンピング受注の防止対策も強化した。
 昨年9月に発足した岸田内閣は、経済政策の柱として「新しい資本主義」を打ち出した。建設業と国交省がこの10年で作り上げてきた労務単価上昇の流れには、成長と分配の好循環を実現した好事例として、政府内の関心も高い。近く公表される労務単価が前年を上回れば、単価の上昇は13年以降で10年連続になる。

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