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Catch-up メンテを阻む「三つの不足」

全国の690自治体の首長らで構成するインフラメンテナンス市区町村長会議が4月28日に発足した。契機となったのは、道路をはじめとした社会を支えるインフラの加速度的な老朽化に対する危機感だ。都内で開かれた設立式典では、会議の代表幹事を務める橋勝浩東京都稲城市長が、インフラの機能を適切に維持する上で自治体の前に立ちはだかる課題として「予算」「技術職員」「知識・技術などのノウハウ」の不足を挙げた。
 日本のインフラは高度成長期に集中的に整備されたため、今後は老朽化が加速度的に進む。例えば建設後50年以上がたつ道路橋は、現在の約30%から、10年後に約55%、20年後には約75%に達するとされる。
 適切な維持管理には、老朽化の進行に応じた計画的・戦略的な対策が欠かせない。9人の尊い人命を奪った2012年の笹子トンネル天井板崩落事故を契機として、道路施設では5年周期の目視点検に基づいて状態を評価し、補修するサイクルが確立された。
 しかし、市区町村の土木費は直近10年間でほぼ横ばいの状態。技術系職員のいない市区町村が全体の約3割を占めるなど、加速するインフラの老朽化を前に、特に小規模な自治体の体制は心もとない。
 国土交通省の道路メンテナンス年報(2020年度版)によると、14〜18年度の点検で対策が必要と判定された市区町村管理の4・2万橋のうち、実際に措置に着手または完了できた橋は約2・8万橋(67%)。点検で問題が見つかっても補修できず、通行止めで対応せざるを得ない状況が顕在化してきている。
 こうした現状に国交省はさまざまな対策を打ってきた。予算不足に対しては、橋梁・トンネルなどの更新、撤去を集中的に支援する「道路メンテナンス事業補助制度」を20年度に創設。
 人材・ノウハウ不足の自治体に対しては、地方整備局の道路メンテナンスセンターを通じた講習や、診断・補修を国が自治体に代わって行う事業も展開している。
 インフラメンテナンス市区町村長会議は、こうした支援も生かしながら、自治体が主体的に課題と向き合い、解決する方策を探す。橋代表幹事は、地域住民の安全・安心を直接的に担う自治体の首長がトップダウンでインフラの機能保全に取り組む重要性を強調した。
 それでは、具体的にどのような対策が可能なのか。市区町村長会議の上部組織であるインフラメンテナンス国民会議の家田仁副会長は設立式典で、複数の自治体が技術者をまとめて運用し、知識の共有やマンパワーの集約につなげる構想を披露した。
 インフラの老朽化や人口減少に由来する人材不足が、今後さらに加速することは間違いない。地域のインフラを持続可能なものとするには、従来の枠を超えたアイデアが求められそうだ。

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