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Catch-up 男女の賃金差に公開義務

常時雇用する労働者が301人以上の会社を対象に、男女の賃金格差の公開が義務付けられた。岸田文雄首相は看板政策を議論する「新しい資本主義実現会議」で、働く男女の賃金格差を早期に解消する必要性を指摘。300人以下の企業についても今後、対応を検討する構えだ。女性活躍の遅れが指摘されている建設業界でも、今回の制度改正を機に、賃金だけに限らず、女性が働きやすい環境をどう整えていくかが課題になりそうだ。
 女性活躍推進法で求められる情報公表項目の中で、ホームページなどで必ず公開する必須項目に「賃金格差」が位置付けられた。7月8日以降、新たに事業年度を迎えてから3カ月以内に前年度の実績を公開しなければならない。具体的な金額ではなく、「男性の賃金に対する女性の賃金の割合」を示す。
 制度の詳細を議論する厚生労働省の審議会では、格差の数字が一人歩きすることを懸念する意見も出た。「全労働者」と「正社員」「パート・有期社員」に分けてそれぞれ開示するよう規定されているものの、再雇用の高齢男性と若年のパート女性を同じ枠で比較することになるなど、大くくりな制度であることは否めない。
 例えば企業が女性活躍に向けて採用を拡大し、若い世代に女性が増えれば、年功賃金では男女格差が一時的に開くこともあり得る。このため厚労省は、追加で背景事情などを補足できる「説明欄」の活用を呼び掛けている。
 さらに、金融庁の審議会でも有価証券報告書に男女の賃金格差の記載を義務化するとした提言を決定。来年度から導入の見通しとなっている。
 こうした動きの背景にあるのは、男女格差の是正をはじめ、労働慣行や安全衛生の取り組み、多様性が企業の長期的な価値に深く関わるという考え方だ。政府は「新しい資本主義」の実行計画で、これらの情報開示を促し、人への投資を加速させる方針を打ち出している。
 女性活躍促進法の表示項目には、開示が必須の「男女の賃金差異」の他、「男女別の育児休業取得率」「平均残業時間」など企業が自由に選択できる項目もある。適切な項目を選び、自社の現時点の取り組み状況を過不足なく伝える努力は欠かせない。特にワーク・ライフ・バランスに関わる項目は、女性だけでなく男性求職者にもアピールポイントとなる。
 人という資本(人的資本)に対して今後どのように投資するのか、現状だけでなく企業が目指す将来像を発信することが重要だ。今回の制度改正を、男女を問わず多様な活躍の道筋をつくる契機とできるかが問われている。

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