気候変動の早急な反映を期待|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞
建通新聞

ログイン

伊賀市役所

気候変動の早急な反映を期待

2020/7/20 

豪雨災害の激甚化が今年も止まらない。活発な梅雨前線による大雨が、7月4日に熊本県南部に甚大な被害をもたらした。その後も長期にわたって西日本と東日本の広い範囲で洪水や土砂崩れが発生。被害は17日午前7時現在、死者77人、行方不明者7人、住家被害1万5335棟などに上っている。
 「令和2年7月豪雨」と呼ばれる今回の災害が被害を拡大していた7日、国土交通省の防災・減災対策本部が『総力戦で挑む防災・減災プロジェクト』をまとめた。
 このプロジェクトでは、「防災・減災が主流となる社会」を目指し、主要な施策として▽あらゆる関係者により流域全体で行う「流域治水」への転換▽気候変動の影響を反映した治水計画等への見直し▽防災・減災のためのすまい方や土地利用の推進―など10の取り組みを掲げた。ハードとソフトの多様な事業を網羅しており、どれも早急に推進すべきだが、特にポイントとなる施策がある。
 注目すべきは「気候変動の影響を反映した治水計画等への見直し」だ。現在の日本の河川や海岸、下水道などの整備計画は、過去の降雨や潮位の記録を基に策定している。これを、気候変動による降雨量の増加や台風の強大化、海面水位の上昇などを見込んだものに見直し、抜本的な対策を講じるという。災害の激甚化の現状を考えれば、遅きに失した感も否めない。対策の基本として作業を急ぐべきだ。
 地球温暖化による降雨量の増加や海面上昇などは、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などで報告され、多くの国が河川堤防や防潮堤の強化や嵩上げなどに乗り出している。海面上昇に対して首都を移転するインドネシアのような例もある。
 敵の実態にそぐわない戦略や戦術はあり得ない。プロジェクトでは、河川や海岸保全施設など施設ごとに2020〜21年度中に計画を見直す。有効な対策の指標を早急にまとめてほしい。
 また「防災・減災のためのすまい方や土地利用の推進」では、災害ハザードエリアでの土地利用の規制を行う。これに関しては、6月に閉会した通常国会で都市計画法などを改正しており、土砂災害特別警戒区域などでの病院や社会福祉施設などの建設の原則的な禁止を22年4月に施行する。
 今回の豪雨では、熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」で14人が亡くなった。高齢者施設では、入所者の避難行動の難しさもあり、繰り返し犠牲者が出ている。改正法の施行まで2年あるが、病院なども含め、可能な部分から重点的に手を打っていくべきだ。
 今回のプロジェクトの柱は、河川や下水道を管理する国や地方自治体だけでなく、企業や住民を含むあらゆる関係者による「流域治水」への転換だ。河川などの整備に加え、雨水貯留・浸透施設の整備や土地利用の規制、避難体制の強化などを推進する。
 『防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策』は本年度で終了する。しかし、防災にめどが立ったとは、国民は誰も思っていない。気候変動による災害への本格的な対策に向けて、総力戦のスタートラインについたのがこの国の現在なのではないか。

いいね 0 ツイート
いいね 0 ツイート
人と建設と未来ラボ
電子版のお申し込みはこちら 新聞(宅配)のお申し込みはこちら
カタログカタログ