すべての経営者が実行の決意を 適正工期と週休2日
2020/9/28
建設工事の著しく短い工期での契約を、発注者に禁じる規定を盛り込んだ改正建設業法が10月から施行する。また、これに合わせて国土交通省の中央建設業審議会(中建審)が適正工期について『工期に関する基準』を策定した。建設業の担い手の確保と定着に向けて、この機会を、完全週休2日制の導入など、建設業の就労環境を“世間並み”に変える大きな節目にしなければならない。
建設業での週休2日の取り組みはまだ緒に就いたばかりだ。日本建設産業職員労働組合協議会が組合員の作業所を対象に行った6月の閉所状況の調査結果(3861作業所回答)によると、平均閉所日数は5・57日で、前年同月より0・39日増えたが、土曜と日曜をすべて閉所したとみられる8日以上の作業所は23・2%にとどまった。
閉所6日以上の作業所が53・8%と半数を越える一方、日曜だけを閉所とした思われる4日の作業所が、割合としては最も多く、23・3%を占めた。0日も含め10・1%が3日以下だった。3割以上の作業所で、週休2日がまったく実施できていなかったことになる。
現状について、地元建設業に入社して3年目になる、現場管理に携わるある若者に話を聞いた。これまで複数の現場を経験し、土日が休みだったのは週休2日モデルの公共工事だけだった。現在携わっている民間工事の休みは日曜のみ。毎日の長時間労働も重なり、仕事を続けられるか迷いを感じ始めている。
そもそも週休2日がいま懸案になっていること自体に問題の深刻さがある。日本の社会で週休2日が普及し始めて既に約30年が過ぎ、完全週休2日が一般化している。陸上のトラック競技であれば、建設業は2周も3周も他産業から引き離された。この現状を変えなければ、ものづくりの魅力をどうPRしても、人材という産業の根底から建設業は瓦解する。
日本建設業連合会の山内隆司会長は9月18日、改正建設業法施行に伴う適正工期による契約について会員に文書を送付し、発注者に工期への理解を求めることや、週休2日(4週8閉所)をベースとした工期設定に努めることなどを求めた。
この中で山内会長は、中建審が策定した「工期に関する基準」について、働き方改革の推進や、2024年度から建設業にも適用される時間外労働の上限規制に対応する上での意義を指摘。「建設業界としては、基準に準拠した適正工期による工事を行う責務がある」とした。「責務」の言葉に、問題への認識とともに危機感がにじむ。
週休2日の実現は、産業間の人材獲得競争にかかわるともに、業界内における企業間の差別化にもつながっていく。適正工期について発注者の理解を得るとともに施工を合理化し、従業員が普通に休める就労環境をつくれない企業は今後生き残っていけないことにもなるだろう。それぞれの経営者の決意が問われる。
設計労務単価の引き上げや、i―Constructionなどによる生産性の向上、今回の改正建設業法の施行など、建設業の週休2日の条件はそろってきた。「やれるかやれないかを考える」のではなく、「やらなければならない時」にきている。
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