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コロナ禍と建設産業 マインドの変革をためらうな

2021/1/4 

濃霧の中にいるような、こんな1年の始まりは初めてだ。まだまだ「五里霧中」を脱したとは言い難く、2021年という年は、人類が「暗中模索」を続ける1年となりそうだ。それでもウイズコロナの時代に建設産業のプレーヤーが自らの行く道を探す手掛かりとなるテーマはある。一つは「多様な人材の確保・育成」であり、もう一つは「インフラという概念の再考」だ。
 建設産業、中でも建設業にとっての人材は、何も技術者と技能者だけではない。いま、とりわけ急ぐべきはデジタル人材の育成・確保だろう。
 新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、こうしている今も尊い人の生命を奪い、世界中の人々を危険にさらし続けているが、一方では、国内外のデジタルシフトを加速させつつある、という事実にも目を向ける必要がある。
 その象徴とも言えるキーワードは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。
 さまざまなICT(情報通信技術)やAI、IoT、さらにはビッグデータを効果的に活用し、全体最適解を導き出そうというDXの概念は、実に多くの産業や技術分野・領域に取り入れられつつある。遅まきながら国土交通省もフロントローディングを主な目的とするBIM/CIM、またはICT施工とは異なる世界観を示すために、i-Constructionに代わる「インフラDX」という新たな造語を生み出し、その使用頻度を高めている。
 ただ、コロナ禍におけるデジタルシフトの加速は、DXに取り組む分野・領域での深刻な人材不足と産業間の人材獲得競争に拍車をかけ、国内での人材確保をますます難しくしている。
 全体最適を目的とするDXを概念ではなく、体感、実感できる都市空間にしたものがスマートシティ、あるいは「改正国家戦略特区法」がいうスーパーシティだとするならば、高度な能力を持ったデジタル人材を有しない建設業側が、IT、通信、建設などの企業や公共・交通サービス事業体をグリップし、マネジメントするという目論見は成し難い。コロナ禍にある今だからこそ、大手企業も中小の事業者も、そして何より国や自治体などの行政・発注機関もウイズコロナ、ポストコロナをにらんだ人材の獲得、育成を怠ってはならない。
 終わりの見えないコロナ禍は、社会・経済に深刻な痛手を負わせ、いまもその傷は、手当てすることもできないまま、対症療法を繰り返している。
 その結果、国も自治体も財政危機がかつてないほどに深刻の度を深め、国債の増発に頼った財政出動は国債費の膨張を招いている。20年度に行った3度の補正予算編成で、20年度の新規国債発行は過去最大の約112兆6000億円に膨らみ、普通国債発行残高は21年度末の時点で990兆円を超える見込みだ。地方財政もあえぎ、もがき苦しみ始めている。歳入の柱である地方税収は落ち込み、臨時財政対策債(赤字地方債)や、国が積み増した地方創生臨時交付金なしには、予算編成もおぼつかない自治体が続出しはじめている。
 いかに財政事情が悪化しようと、多発・激甚化する自然災害への備えは、何としても強化しなければならない。政府が2020年12月11日に閣議決定した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」は、その認識と意志の表れだ。老朽化が進行するインフラはより適切に維持・管理しなければならないし、長寿命化も重要な取り組みだ。
 他方、人口減少や少子高齢化に起因する社会課題、パンデミックがもたらした新たな社会課題への対応も必要だ。これまでこの国のインフラ整備や公共サービスの主体であった国、地方公共団体など公共セクターの弱体化は避けられそうにはないが、建設産業にはこれまで積み重ねてきた「知見」があり、「経験」があり、「技術」がある。社会が疲弊する中にあって、公共セクターの代行者となり得るのは、建設産業のプレーヤーなのではないだろうか。
 国、自治体は、おそらく、そう遠くない時期にない袖を振れなくなる。もはや「インフラ」という概念も、その担い手も固定的に捉えるべきではない。ポストコロナの時代をにらみ、「マインドセットの変革」をためらうべきではない。

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