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建設業の事業承継と経営革新 いま、この時を生かしたい

2021/2/22 

中小企業を対象に行った日本政策金融公庫の調査によると、「自分の代で廃業するつもり」という『廃業予定企業』の割合は、全体の52・6%に及んでいる。子供がいない、子供に継ぐ意思がない、適当な後継者が見つからない、といった「後継者難」がその理由の29%を占める。建設業に限ってみても、廃業予定企業は49・2%、事業承継の意向はあるものの後継者が決まっていない会社も24・9%あった。
 実際に建設業の廃業は、ここ数年高水準で推移している。2020年の1年間では、全産業で最も多い7000件を超える建設企業が全国で廃業に追い込まれた(帝国データバンク調査)。中小建設企業は、地域経済を支え、雇用の受け皿となり、災害時に備えた安心・安全を担っているだけに、その影響も懸念される。
 建設業を所管する国土交通省も、こうした状況に危機感を抱く。昨年10月に施行した改正建設業法では、廃業を抑止し、事業承継を後押しするため、建設業許可の条件となる経営業務管理責任者(経管)の経験年数や業種などの要件を緩和。M&Aなどで事業を引き継ぐ際に生じる許可の空白期間も解消し、合併や分割などを経ても公共工事の競争入札参加資格などが継続できる仕組みを整えた。
 これらの取り組みにより、建設業の事業承継へのハードルは低くなった。とはいえ、事業承継の促進に向けた課題は、依然として残されている。多くの企業にとって、世代交代を躊躇(ちゅうちょ)させる大きな要因は、業績の低迷や伸び悩み、そして会社の将来を見通せないことにあるのではないだろうか。
 今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は、多くの建設企業の経営にも影響を及ぼしている。民間建設投資の落ち込みが続き、先行きは以前にも増して見通すことが難しくなった。そうした不安が、承継する側と承継される側、双方のブレーキになっていることも少なくないと聞く。業績の落ち込みや将来への不安が、廃業を選択するという心理につながってしまうケースもあるだろう。
 一方でコロナ禍が、建設業に大きな変革を迫っている状況を見過ごしにはできない。デジタル化のうねりは、本社・営業所や建設現場など経営のあらゆるところに押し寄せている。他産業から建設産業への参入も増え、建設業の在り方そのものが大きな転機を迎えている。現実的に考えて、デジタル化の進展などが劇的に進んでいく中で、現在のやり方を続けながら、企業を継続させ、発展させていくことができるのか。
 ワクチン接種が始まった。いよいよ“コロナ後”へ向かう出口が、かすかに見え始めた。この先、事業環境の改善と同時に、直面する変化への対応が、さらに求められることになるのは必至だ。中小建設企業には、従業員、取引先のみならず、地域の安心・安全を守り、さらには地域経済を支えるという、これまで果してきた重責を引き続き担ってほしい。事業承継が課題となっている多くの中小建設企業にとって、“コロナ後”を見据える今が、その実現に向けて一歩を踏み出す、絶好の機会と考えてもいいのではないだろうか。

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