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中小建設業のデジタルシフト 東京の付加価値化に不可欠

2021/3/22 東京版 掲載記事より

東京都は「デジタルサービス局」を4月に発足させる。都庁内外に向けて質の高いデジタルサービスを提供するための旗振り役を担う。
 建設業関連の動きとしては、建設業許可を含めた行政手続きのデジタル化やICT施工の拡大に向けた検討なども進んでおり、今回の組織再編には、都政のあらゆる分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現しようという都の意気込みがうかがえる。
 新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、わずか1年の間に業務へのリモートの導入が官民で急速に広がった。都の発注工事では、現場の生産性向上と施工管理のさらなる効率化を推進しようと、リモート会議を拡大し、ウエアラブルカメラなどを使用した遠隔臨場の試行も始まった。
 企画段階の打ち合わせから設計・施工、完成・引き渡しに至るまで、一連のプロセスのデジタルシフトは、受発注者がともに足並みをそろえてこそ、効果が発現する。そこで鍵になるのが、都内企業のほとんどを占める中小企業の取り組みだ。
 都内の中小企業をみる限り、デジタルシフトに呼応するための経営環境の整備が追い付いていない。通信環境を整えるための費用負担は決して軽くはないし、何よりもデジタル人材の確保・育成に戸惑い、そのための人材投資に躊躇(ちゅうちょ)する事業者も少なくないようだ。
 業界団体は都に対し、折に触れて「設備の導入費用の発注者負担分を拡充し、受注者の費用軽減を図ってほしい」と求めてきたが、都は「感染症の拡大防止に必要な費用であれば、設計変更の協議を受け付ける」という対応にとどまっている。
 DXによる建設産業の生産性の向上は、都政そのものの生産性の向上と財政負担の軽減、ひいては都民の安心で快適な暮らしの質の向上や、首都東京の経済活動の基盤の整備にも寄与するはずだ。都は、都市空間を付加価値化するという視点に立って、その担い手でもある建設業のデジタルシフトを支援してほしいものだ。
 都内中小建設企業を取り巻く景況は、厳しさを増している。東京商工リサーチの調査によると、最近の建設業のコロナ破たんの原因で最も多いのは、受注案件の延期や中止などによる事業環境の悪化だという。
 東京都入札監視委員会制度部会と都財務局、東京建設業協会をはじめとした業界団体が行った意見交換会でも、公共・民間工事の受発注状況について「案件ごとの競争が激しくなっている」「落札率が低下し、適正な利益確保が難しい」という現状が報告されている。
 コロナ禍の終息はまだ見えない。国内外の経済の行方、景気動向は予断を許さない。それでも建設業の持続可能性を高めるために、働き方改革をさらに推進するために、建設業が加速するデジタルシフトの潮流に乗らないという手はない。むしろ、DXへの取り組みが、個社だけでなく、産業構造そのものの強化にもつながることが期待される。
 都には、建設業のデジタルシフトを支援することが、都政の目指す近未来の首都東京の姿に近づける道だということを、ぜひ、認識してもらいたい。

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