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品確法の発注者責務 「適正な利潤」再認識すべき

2021/6/28 

「公共工事で利潤を出すことが悪≠ニいう先入観がある」。2014年に品確法改正が議論されていた際、ある自民党幹部はこう話し、発注者の意識を改革する必要性を訴えた。受注者が適正に利潤を上げ、担い手を確保・育成する。発注者はそのために適正な予定価格を設定する―。品確法にはこうした理念が盛り込まれている。
 一部の地方自治体が、設計書金額を根拠なく減額する、いわゆる「歩切り」を依然として行っていたことが、国土交通省の調べで明らかになった。歩切りは16年までに根絶≠ウれたはずだったが、5年ぶりの調査で、16団体が歩切りを行っていたことが判明した。
 品確法では、市場の実態を反映した適正な予定価格を設定することが、発注者の責務とされている。国交省は、根拠なく予定価格を切り下げる歩切りが、この規定に違反する行為だとして、歩切りを行わないよう指導。400団体以上の自治体に歩切りを廃止させたはずだった。
 歩切りを行っていたことが再び発覚した自治体も、国交省の再指導を受けてすぐに廃止を決めた。ただ、わずか16団体とは言え、発注者がこうした行為に及んでいた事実は、他の発注者でも本当に予定価格が適正に設定されているのか、不安を抱かざるを得ない。
 設計書金額を算出するための積算の段階でも、根拠のない価格の切り下げが行われている。発注者がメーカーなどから見積もりをとり、予定価格に反映する際、市場実態や妥当性を確認せず、一律に乗率を設定し見積価格を切り下げているケースがある。こうした運用は、予定価格設定の公平性・透明性を損ない、実質的に歩切りと類似する結果を招く恐れがある。
 一方、発注者が適正に予定価格を設定したとしても、特に土木工事では着工後に設計と現場条件が異なり、設計変更が必要になることが一般的。にも関わらず、予算の制約などを理由に発注者が設計変更を認めないケースが後を絶たない。
 設計変更を円滑に行うための『設計変更ガイドライン』を策定したり、国交省のガイドラインを準用している市区町村は全体の54・1%。ただ、ガイドラインを策定しただけでは、適切に設計変更が行われているかは不透明だ。このため、国交省は、ガイドラインの記載内容を特記仕様書に契約事項として取り扱うことを明記し、ガイドラインの適正な運用を担保するよう求めている。
 品確法が発注者に求める適正な予定価格は、受注者が「適正な利潤」を確保するため、さらに受注者である建設業がその利潤によって「中長期的な担い手の確保・育成」を実現するためのものだ。
 公共事業に広がっていた『安ければいい』という発想を覆すために品確法は制定され、発注者は、受注者に適正な利潤を確保させる責務を負った。予定価格を根拠なく切り下げたり、設計変更を正当な理由もなく拒否することが、この責務に沿った行為と言えるのだろうか。発注者には、官積算の成果である予定価格と、最終的な支払額を決める設計変更が、受注者の利潤を、ひいては担い手の確保・育成をも左右する重要なファクターであることを再認識してほしい。

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