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「加害者」になっていないか パワハラ防止

2021/7/26 

知らず知らずのうちに、誰かに苦痛を与えていないか。必要以上のプレッシャーをかけていないだろうか―。
 建設業界でかつて当たり前だった言動や指導方法が通用しなくなっている。厚生労働省がまとめた調査(2021年3月)によると、過去3年間にパワーハラスメントを「何度も繰り返し経験した」「時々経験した」「一度だけ経験した」と答えた労働者の割合は、合わせて31・4%だった。業種別では電気・ガス・熱供給・水道業(41・1%)に次いで、建設業が36・2%で2番目。中でも悪質な「何度も繰り返し経験した」とする回答は建設業が8・9%で最も高かった。
 担い手不足が深刻な問題となる中で、こうしたパワハラが若手の定着を阻害する要因の一つになっている可能性もある。いま一度、自分や周囲の関係者の行動を振り返ってみるべきだろう。
 高校卒業後に建設業に入った若者の約半数が、3年間のうちに建設業を辞めていく。ある工業高校の進路指導の担当教諭によると、最近の若者の気質は、総じて「まじめでおとなしい」と言う。大声で怒鳴られたり、人前で叱責された経験はほとんどない。前近代的な『背中を見て覚えろ』という教育方法も「いまの若者には通用しない」。
 一方で建設業では、かつてより減ったとはいえ、依然として乱暴な言葉が使われがちだ。危険な作業が伴うケースもあり、「バカやろう」「なんど言ったら分かるんだ」なんて言葉が、つい口から出てしまう。口数の少ない職人気質の親方が、丁寧な指導もないままに「こんなこともできないのか」と言えば、パワハラだととられかねない。
 厚労省によると、パワハラとは「職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、適正な範囲を超え、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為」である。もちろん適正な指示や指導であればパワハラにはならないはず。ただ実際の判断は、案件ごとに、そこまでに至る経緯や行動などを考慮するため、「ここからがパワハラ」という明確なラインはない。平均的な労働者の感じ方が基準とされるが、これも曖昧(あいまい)だ。
 来年4月には、現在猶予されている中小企業にもパワハラ防止法(労働施策総合推進法)が適用される。同法では一人一人の労働者にも、取引先などを含めた他の労働者への言動に注意を払うことが責務とされる。
 高齢化が進み、人材不足が顕在化している建設業こそ、こうしたパワハラ防止に関連する法整備などもきっかけにしながら、若手が定着しやすい職場環境を作っていく必要があるだろう。
 当たり前だと思っている指導方法が、意図せずに若手を傷つけている可能性もあるのではないか。たとえそこに愛情があったとしても、いつの間にか自分が加害者になってしまうことがあるのかもしれない。「いまの若者は」などと嘆くのではなく、率先して若い世代の考え方や気質を理解し、一人一人が意識して変わっていくべきだろう。そうした行動が、パワハラを防ぐだけでなく、将来を担う若手の意欲や成長を促し、建設業界の担い手確保にもつながっていくはずである。

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