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賃上げ企業にインセンティブ 成長を促す政策が必要だ

2022/1/31 

昨年11月、岸田文雄首相は、今年の春闘で3%以上の賃上げを実現するよう、経済界に要請した。成長と分配の好循環を目指す「新しい資本主義」を実現するため、ここ数年、低下している賃上げの水準を再び上昇させる狙いがある。ただ、原材料コストが上昇し、感染力の強いオミクロン株が急拡大している足元の経済状況は、必ずしも賃上げに追い風が吹いている環境とは言えない。
 政府が企業に賃上げを求める上でのキーワードは「官民連携の強化」。税制や公共調達にインセンティブを設け、企業に賃上げを促す。
 賃上げした企業に税制優遇を与える「賃上げ促進税制」は、2022年度に法人税から差し引く控除率を引き上げる。現行の控除率15%は、従業員の給与支給額を前年度比3%以上引き上げた大企業で最大30%、1・5%以上引き上げた中小企業で最大40%に見直す。
 公共事業の入札でも、賃上げした企業への加点措置を講じる。4月1日以降に契約する直轄事業では、大企業で3%以上、中小企業で1・5%以上の賃上げを表明した入札参加者に対し、総合評価方式で加点する。加点の割合は合計点の5%以上とする。賃上げの実績も確認し、未達成だった落札者に対しては、その後に参加した入札で1年間の減点措置を講じる。
 ただ、これら税制と公共調達での優遇措置は、22年度以降に従業員の給与を引き上げた企業を対象としたものだ。企業経営者は、優遇措置で得られる成果を先取りし、賃上げの経営判断を下す必要がある。これらの優遇措置が、原材料の価格上昇や感染拡大による不安を抱える経営者の背中を押してくれる優遇措置として、十分であるとは言いにくい。
 1月18日に開かれた自民党の品確議連でも、公共工事設計労務単価の引き上げ、低入札価格調査基準価格・最低制限価格の上限枠(予定価格の92%)と算入率の引き上げを求める声が、建設業団体から上がった。賃上げの原資の確保が必要だとして、積算基準の現場管理費と一般管理費の引き上げを求める声も強かった。
 財務省が全国1197社を対象に行った調査によると、21年度に従業員の給与のベースアップを行った企業は31・0%と、コロナ禍前の19年度より16・8ポイント減少した。賃上げのボトルネックとしては「先行きの不透明感」を挙げる企業が63・7%と最も多く、「既存業務の業績が不安定」と答える企業が34・2%で続いた。
 同じ調査では、ベースアップを行わず、賞与・一時金を増額した企業が17・9%となり、2年前より4・5ポイント上昇している。たとえ業績が伸びていたとしても、自社の先行きが見通せず、従業員のベースアップに踏み切れない企業が増えている。
 業績が伸び、成長する企業でなければ、従業員の賃上げを実現することはできない。岸田内閣が掲げる「成長と分配」の根拠もそこにあるはずだ。行政が掛け声を上げるだけでは、企業は賃上げの経営判断を下すことはできない。経営者が感じている先行き不透明感を払拭(ふっしょく)し、企業の成長を後押しするよう、さらなる政策の充実が必要だ。

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