社員の定着・育成に努力と工夫を 新社会人を迎えて
2022/3/28
新社会人の入社シーズンである。この週、若い力を職場に迎える建設会社も多いだろう。建設業の担い手の確保と育成が懸案となっている中、企業においては、新入社員を獲得するとともに、入社した若者を会社に長く定着させ、将来を担う人材として育てていくことが大きな課題になっている。
せっかく入社した若者が、数年以内に会社を去っていくケースは少なくない。厚生労働省が毎年行っている調査によると、新規学卒者の就職後3年以内の離職率は2020年度、高校卒業者の平均が36・9%、大学卒業者が31・2%だった。
宿泊・飲食サービス業などで50%を越える高さだが、建設業も低くはない。建設業での高卒者の3年以内の離職率は42・7%で、全産業の平均を5・8ポイント、製造業を15・5ポイント上回る。大卒者の建設業での離職率は全産業平均を下回るが、製造業より9・0ポイント高い28・0%が3年以内に離職している。
まず、この現状を変えていかなければならない。
3Kだとして敬遠されがちな建設業だが、「ものづくりがやりたい」と建設業を選択する若者も増えている。第一に、そんな若者の意欲を削ぐ業界であってはならない。
左官工事業の原田左官工業所(東京都文京区)の原田宗亮社長は、「左官の仕事をしたい」とやってくる若者が、00年代の半ばごろから現れ始めたと振り返る。しかし、昔からのやり方で「見て覚えろ」と言っても、今の若者は、職人の世界になじめないまま辞めてしまう。そこで、ビデオも活用した社内でのモデリング訓練や、他職種の経験を組み入れた独自の育成システムをつくった。その後、定着率が大きく改善したという。
週休2日制の導入や有給休暇の取得促進など就労環境の改善も、新卒採用の拡大と定着促進の必須条件になっている。
公共土木を主に手掛ける大竹組(徳島県牟岐町)ではかつて17年間、新卒採用の応募がゼロだった。18年11月に完全週休2日制を導入したほか、有休休暇の平均取得率(70%以上)などが条件となる厚生労働大臣の「ユースエール認定」を16年度から継続して受けている。これらの結果、若者の入社・定着によって、45人の社員のうち30歳未満が15人を占め、平均年齢が39歳に若返った。
仕事のミスマッチを防ぐことも重要だ。
電気設備工事の東京電工(東京都三鷹市)では、条件の合う学生に企業側からオファーする採用媒体を活用するほか、独自の1DAY(ワンデー)インターンシップを導入した。さらに、「キャリア開発支援制度」として入社後、技術者あるいは技能者、さらに、それぞれの道でのマネージャーあるいはプレーヤーを選択できるようにした。山本浩司社長は「個々の社員がパフォーマンスを一番発揮できるポジションに就くことがベスト。自分で選べることが原動力となり、責任感も高まる」と話す。
日本的な終身雇用制は崩壊したと言われるが、技術や技能によって成り立つ建設業の仕事においては、優秀な人材を育成し、会社に定着させることは極めて重要だ。企業の生き残りに関わる取り組みである。
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