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ワーク・ライフ・バランスを目指そう

2017/10/28 

厚生労働省は、脳・心臓疾患の労災認定基準のうち「長期間の過重業務」の判断の目安に関して、発症前1ヶ月間に約100時間、または発症前2〜6カ月間にわたって1カ月当たり約80時間を超える時間外労働が認められる場合、「業務と発症との関連性が強いと評価できる」としている。
 一方、3月にまとまった政府の「働き方改革実行計画」を踏まえ、労働基準法を今後改正して罰則付きで施行される時間外労働の上限は▽単月で100時間未満▽2〜6カ月の平均で80時間以内―である。つまり、労災認定ラインに達する長時間労働がそのまま時間外労働の上限になる格好だ。
 時間外労働の上限規制が、法施行後5年の猶予期間を経て建設業にも適用される。これに対応するため、週休2日の導入などによる労働時間の短縮が建設業においても喫緊の問題になっている。法令はもちろん順守しなければならない。しかし、労災認定ラインに相当する時間外労働を上限とする改正法に対応するだけでいいのだろうか。
 建設業の担い手の確保・育成と、これに向けた就労環境の改善が懸案となっている中で、建設業の経営者は、今回の法改正を、自社の就労環境の改革に本格的に取り組む好機と捉えるべきだ。
 その指標の一つとなるのは「ワーク・ライフ・バランス」だ。仕事と、子育て・介護・趣味・地域活動などの生活が両立し、調和した状態を意味する。長時間勤務の排除や、仕事を続けながら子育てや介護、地域活動ができる柔軟な勤務体制の構築などに取り組む。
 特に、従業員の生活が充実することによって、仕事に充実感ややりがい、生きがいを持てるようにすることが重要だ。社員が心身ともに健康な状態で、安心して仕事に取り組めてこそ、企業の業績の向上にもつながる。
 ワーク・ライフ・バランスに積極的に取り組む企業を「ワーク・ライフ・バランス認定企業」などとして評価する制度を導入している地方自治体も多い。東京都や京都府、高知県などをはじめ、市区町村レベルでも実施している自治体がある。
 それらの自治体のホームページを見ると、認定・認証企業の概要などとともに各社の取り組みを紹介している。入札の競争参加資格審査で評価しているところもある。既に認定されている建設会社や関連企業も少なくない。
 少子化と人手不足が深刻化し、従業員の採用や確保に苦戦する企業が増えている。一方、新卒学生を含め求職者がインターネットを使って企業情報を集める行為はいまや常識になっている。
 ワーク・ライフ・バランス認定企業として評価され、ネット上で紹介されることは、人材採用活動の面でも有利になるはずだ。特に知名度の低い中小企業にとってメリットは大きい。
 もちろん、社内制度を整えるだけにとどまってはならない。常に改善と工夫を重ね、従業員が生きがいを持って働き、企業として伸びることができる環境づくりに持続的に取り組んで行かなければならない。