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今週は「防災週間」 防災・減災「教育」を考えたい

2019/8/31 

防災週間が始まった。昨日の「防災の日」はもちろんのこと、今日も全国各地で多くの建設関係団体や学協会が防災訓練・演習を主催し、国や地方公共団体、関係団体などと合同で実施している。つい先日も佐賀県を中心とする九州北部が豪雨による大きな被害を受けたばかりだが、近年、毎年のように台風や豪雨、地震、火山活動による災害が頻発し、かつ激甚化している。訓練・演習の「想定」は、これまで以上に、より実践的なものとなってきているようだ。
 こうした問題意識の高まりが見られる一方で、「防災」に対する個人の意識や行動には、被災経験者は別として、世代間ギャップのようなものが見え隠れしてきているような気がしてならない。
 筆者は、台風という文字を見て、その言葉を聞くと、父親が全ての雨戸を閉め切り、要所々にくぎを打ち付けていた記憶や、懐中電灯の灯りの下で母子でおびえていた記憶がよみがえってくる世代だが、現代の若者がこうしたシーンを想像することは難しいだろう。
 当時、義務教育の課程には「地理」教育もあった。地球の中の日本列島の位置、その列島の中で自分たちが暮らす「わがまち」の位置を知った。自分の暮らしているまちが扇状地であることや、まち中を流れる川が「天井川」であることなど、地学の初歩的なことまで教えてもらった。地図(標高)の見方、天気図の見方も教わった。
 たしかに、未曾有(みぞう)の災害である東日本大震災を契機として、それまで軽視されていた感のあった防災教育の在り方が見直され、「命を守る教育」が実践されるようになってきてはいる。
 だが、かつて(1960〜70年代)に義務教育を受けた身からすると、義務教育の前から、保育園・幼稚園に始まり、小学校・中学校・高校、そして専修・専門学校・大学に至るまで、それぞれの教育課程で、段階を踏んで教えるべき、伝えるべき防災教育があるように思えてならない。
 懐古趣味ではない。ただただ、この国と、この地球の将来を担う子どもたちが、地球温暖化による気候変動や地殻変動の影響を的確に理解し、自分のできる範囲でいいから分析・評価し、リスクを低減・最小化しようとする―そんな大人になるための教育の在り方を考えたい。
 令和の時代となったいま、「防災の日」が昭和36(1960)年6月11日、当時の岸内閣の手で、それも日米安保闘争のまっただ中に創設されたという事実を知る(覚えている)国民は、そう多くはいない。
 だからこそ、「防災の日」が大正12(23)年9月1日に関東大震災が発生した日であること、昭和35(59)年9月26日に「伊勢湾台風」によって死者4700人、行方不明者401人、負傷者3万8917人―という甚大な被害が発生したことを重く受け止めた当時の政府が、「地震や風水害など自然災害に対する国民の心構えを醸成する」ことを目的として創設されたものだということも、しっかり伝承していきたいところだ。
 今日からの防災週間。防災と減災のための人材教育と学校教育の在り方についてもしっかり考えたい。