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都の建設業の働き方改革

2019/11/18 

東京都は建設業の働き方改革の一環として、週休2日工事の適用をさらに拡大する。11月14日に開いた技術会議で、関係局長らがその方針を了承し、適正な工期設定・工期延伸や必要な経費の計上などの対応を進めることを確認した。2020年度は都発注工事の2割程度に当たる1000件超となる見通しだ。
 都発注工事での週休2日導入に向けた取り組みは、15年度に建設局が先行してモデル工事の試行を始め、18年度からは原則として全案件で受注者が適用の可否を決める受注者希望型を実施。財務局では発注段階で週休2日を条件とする発注者指定型を試行している。工事件数の多い都市整備局、住宅政策本部、港湾局、交通局、水道局、下水道局でも試行を始めており、19年度の契約件数は都全体で約950件に上る見通しだ。
 一方、週休2日工事として契約したものの、実現できなかった現場も少なくない。工事完了後に実施しているアンケート調査では、その理由として「関係者などとの調整に時間を要した」「職人・資機材の手配が難航した」「想定以上に施工困難だった」「契約工期が短かった」「企業者工事など関連工事が遅れた」「本社や下請けの理解が得られなかった」―などが挙がった。さらに「適正な工期設定や工期延伸(契約変更)に対応してほしい」「適切に経費を計上してほしい」「職人の手配や資機材の手配が困難になる時期があった」―といった要望や改善要求も寄せられている。
 こうした声を受けて、都は適正な工期の設定・延伸や、必要経費の計上にも取り組む。
 適正な工期を実現するため、準備や後片付けの期間も含めた工期とし、公告時に参考資料として工程表を公表する。関係機関との協議や関連工事の期間などの影響も特記仕様書の中で明示。それに合わせて工期を延伸する。
 経費については、当初契約時から必要経費を計上することとし、▽労務費▽機械経費(賃料)▽共通仮設費▽現場管理費―を補正する。
 都の工事を元請けとして受注する事業者は、中小規模であっても週休2日制の導入は進みつつあるが、それでも全ての工事で週休2日を実現するのは困難だ。
 20年度予算編成の知事ヒアリングに参加した東京都中小建設業協会は、現場で働く技能者の給与体系は依然として日給月給制が大半だと説明し、これまで6日間で得ていた収入を(週休2日によって)5日間で得るためには「労務費の補正率を1・2以上にしないと生活が成り立たない」と指摘、現行の補正率の再考を促した。週休2日の現場が拡大すれば、日給月給制の技能者が都発注工事を避け、必要な人材が確保できないことも危惧されている。
 将来にわたるインフラ整備の担い手確保・育成に危機感を抱き、都が建設業の働き方改革をけん引することは重要なことだ。しかし、それは都発注工事の大半を担う中小建設業の実態や、その事業継続に配慮したものでなければならない。事業者の声を丁寧に拾いながら、国や区市町村、そして民間工事の発注者とも連携し、都内全域での取り組みにつなげる必要がある。