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急ぐべき現場へのカードリーダー配置拡大

2019/12/21 

「2年前から高校新卒者の応募がぴたりと止まった」。社員の採用に関して東京都内の土木基礎工事業者はそう話す。これまで20年以上、技能者として毎年1〜3人の新卒者を採用してきたが「蛇口の栓が閉まったようだ」と表情を曇らせた。
 人手不足と少子化を背景に若手技能者の確保が厳しさを増している。処遇を改善し、職業としての魅力を高めなければならない。その切り札の一つとして期待されるのが、技能者の資格や経験などの情報を蓄積し、処遇改善などにつなげる建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及だ。
 4月から本格運用が始まったCCUSだが、課題も浮かび上がってきた。特に問題なのは、技能者の就業履歴を記録するCCUSカードリーダーの現場での設置が進んでおらず、現場の規模によっても設置状況に大きな偏りがあることだ。
 日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)が会員(同業の非会員を含む)に行ったアンケート調査(回答226社、8月末現在)によると、大手5社の現場でのカードリーダーの設置率は62%だった。5社を除く全国ゼネコンでは21%に低下。都道府県ゼネコンの現場はわずか2%と、ゼロに近かった。全体では21%にとどまった。
 一方、会員の事業者登録の割合は76%に上った。技能者の登録についても、会員の技能者は、2月と比べ80%増の1750人に増えた。
 下請け事業者と技能者の登録に合わせ、カードを使える現場を拡大する必要がある。調査結果は、制度の両輪の進捗のギャップを浮き彫りにした。
 技能者が登録しても、就業履歴を蓄積できる現場が限られれば、制度の普及に水を差す。逆に、現場でのカードリーダーの設置が一般化すれば、技能者登録を加速する弾みになる。
 国と建設産業界は、現場でのカードリーダーの設置を、制度普及の最上流の取り組みとして推進する必要がある。
 特にネックとなるのは、カードリーダー設置の前提となる事業者登録の地域建設業での促進だ。同協会の調査では「地方ゼネコンでは話題にすらならない。普及に何年かかるかわからない」という声も上がった。
 国土交通省は、直轄工事でモデル現場を設定し、事務作業の合理化などにもつながるCCUSの効果をPRする取り組みを始めた。日本建設業連合会もこれに呼応し、モデル現場を設定することにした。
 地域建設業の登録を拡大するには、地方自治体の関与が重要だ。山梨県は10月から土木の総合評価方式で、CCUSに登録した入札参加者に対する加点措置を開始した。福岡県は20年度の競争参加資格審査で登録事業者を加点することにした。10月に国交省が行ったアンケートではこのほか、長野県や静岡県など7県が競争参加資格審査や総合評価での加点を検討していることが分かった。
 CCUSによる生産性の向上では、登録情報を民間システムと連携させ、勤務時間管理や書類作成などに要する現場技術者の1日の業務時間を2時間削減した例もあるという。
 さまざまな手立てを講じ、現場へのカードリーダーの設置を進めなければならない。