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デジタル時代とデベロッパー 問われる「人材投資」の在り方

2020/3/2 

デジタルシフトによって、建設・不動産業に異業種・異分野の参入が増えつつある。ICT企業らと連携し、技術と知見を取り込むことで新たな市場を開拓したい。
 デベロッパー各社が主力としているマンション分譲事業の景況は、長期的な見通しを立てるのが難しくなっている。不動産経済研究所(東京都新宿区)が2月に発表した全国のマンション市場動向を見ても、2019年1〜12月に発売された民間新築マンションの戸数は7万0660戸で、18年比12%減。3年ぶりの減少で、1976年以来の低水準にとどまっている。
 供給戸数が減っている一方で、分譲単価・平均価格は最高値の更新が続いている。この価格の高止まりがエンドユーザーの購買意欲に影響していることや、人口減少も一因にあるだろうが、中古マンションの成約数が新築マンションの供給戸数を上回っている現状を見れば、単にマーケットが縮小しているという状況でもなさそうだ。エンドユーザーが、住まう場所≠購入するだけでは飽きたらず、働き方、住まい方といったライフスタイル全般についても新しい価値を求めて物件を吟味するようになってきた変化の表れ、と見えなくもない。
 大手デベロッパー各社は、すでに手を打ち始めている。新たな収益源を見いだそうと、ソフト面を含めたサービスの提供を強化する動きがある。ビッグデータの蓄積や既存の商品・サービスへのICTの活用、不動産とICTの融合によって、新たなビジネスを創ろうとしている企業もある。
 マンション建設シェアトップの長谷工コーポレーション(東京都港区)は、マンション内のあらゆる情報をデータ化、見える化する試みを始めた。実証実験の場となるマンションも3月に完成する。住民のニーズに合った管理や、子ども・高齢者の見守り、防災・減災などのハード面だけにとどまらず、新たなサービスの提供につなげたいと考えている。
 問題はICT人材の確保だ。ゼネコン・デベロッパー各社は、AIをはじめとしたデジタル関連技術に関わる人材を、これまで積極的に社内育成してこなかったのではないか。異業種・異分野と連携するにしても、「どの企業と、どう組むべきか」を判断することは難しい。
 三井不動産(東京都中央区)や三菱地所(東京都千代田区)など、大手デベロッパーはスタートアップ企業との協業や出資を積極化している。その背景として、三菱地所の吉田淳一執行役社長は「自らイノベーションを興すことは無理だとしても、常に注視し、その近くにいなければいけないという危機感を持っている」と話す。表現こそ違うとはいえ、どうやらこれが、各企業における経営陣のおおよその共通認識のようだ。
 もはやライバルは同業他社だけではない。トヨタ(愛知県豊田市)は静岡県裾野市にスマートシティーの実証実験都市を開発する計画を打ち出した。先行きが不透明な時代だからこそ、いつどんな社会環境の変化が起こっても適応できる人材確保・育成が不可欠だ。問われているのは、デジタル時代の「人材投資」の在り方、だ。