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中建審が「工期に関する基準」 工期ダンピング≠フ抑止力に

2020/7/27 

中央建設業審議会が「工期に関する基準」を7月20日に開いた総会で決定し、改正建設業法の「著しく短い工期」を排除するための枠組みが整った。現場に従事する技術者・技能者の長時間労働に頼らない工期を設定することが目的だが、その目論見どおり、建設産業はこの基準を順守し、改正法に込められたこの理念を実現することができるのだろうか。
 改正建設業法では、注文者(発注者、元請け、上位下請け)に対して、通常認められる期間と比べて「著しく短い工期」を禁止する。2024年4月に時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用されるのを前に、長時間労働を前提とした短工期の排除が狙いだ。
 改正建設業法が施行される10月1日以降、許可行政庁は、この規定に違反した発注者を勧告し、建設業者(元請け、上位下請け)を勧告・指示処分できるようになる。ただ、建設工事は大量生産の工業製品とは違い、受注した工事によって工程や投入する資材・労働力が異なるため、工期の適正性を一律に判断することはできない。そこで、許可行政庁が勧告の判断材料の一つとするのが「工期に関する基準」だ。
 この基準は、自然要因や休日・法定外労働時間などの「工期全般」、準備・施工・後片付けの各段階における「工程別」、主要な民間工事の「分野別」に考慮すべき事項で構成している。
 許可行政庁は、受注者からの通報で著しく短い工期と疑われる工事があると、同種工事の過去の実績と比較、受注者が提出した工期の見積もりの内容を精査して基準を踏まえた工期が設定されているか否かを確認。個別に勧告すべきか否か是非を判断する。
 改正建設業法では、こうした事態に陥らないための事前の措置も整備された。注文者には、支持地盤深度、地下水位、地下埋設物といった、工期に影響を与える恐れのある事象や事物、近隣への対応などを契約前に受注者に通知することを義務化。受注者には工程ごとの作業と必要な日数を見積もりに記載する努力義務も課す。
 他方、契約書には、休工する日・時間帯を契約書に記載することも求める。
 こうした法的な枠組みが整えられた背景には、2000年代に横行した低価格受注と、それに伴う短工期の横行を繰り返させてはならないという、中建審としての明確な意思がある。価格競争が激化した2000年代、建設産業は労務の集中による工期短縮という一つの手段として乗り切ってきた。工期を過度に短縮し、下請けにしわ寄せを及ぼしかねないこうした商慣習が、技能者の賃金低下や労働環境の悪化を招き、今の担い手不足を引き起こす一つの要因になった。
 新型コロナウイルス感染症に収束の兆しが見えない中で、民間建設投資の先行き不透明感は日に日に高まっている。と同時に、価格と工期のダンピングが再び横行する懸念も広がっている。改正建設業法と工期に関する基準をその抑止力とし、適正な工期設定のよりどころ≠ニできるか否かは、建設産業に関わる全ての人々が従来型の商慣習を変えられるか否か、にかかっている。