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長期化する景気低迷 本当の正念場はこれからだ

2020/9/7 

緊急事態宣言が発出された4月7日から5カ月が経過した。新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐための「新しい生活様式」が広がり、建設業でも工事現場や事業所の「3密」対策やテレワークなどが根付いてきた。一方で、経済環境の悪化に伴う建設投資の減少など、経営への影響はじわじわと広がっている。感染症の再拡大、景気低迷の長期化が懸念される中で建設業のプレーヤーはいま何をすべきなのか。
 建設業は、他産業に比べ、新型コロナウイルス感染症の拡大による業績への影響が「小さい」と言われてきた。複数のアンケート調査の結果を見ても、総じて建設業は、どの業種よりも「影響が小さい」という回答が多い。やや「楽観気味」であるような気がしてならない。緊急事態宣言後に一部の工事がストップする事態が発生したものの、6月〜7月上旬にはほぼ全ての工事が再開したことを過大評価している恐れがある。
 コロナ禍の影は確実に建設業にも忍び寄ってきている。ここ数カ月の住宅着工戸数は過去10年で最低の水準。建設会社の受注総額も前年同月比で大幅なマイナスが続いている。今後も住宅着工の先送りや民間設備投資計画の見直しなどにより、建設投資の減少が続くと予想される。経営に影響が及ぶまで比較的時間がかかるといわれる建設業にとって、「本当の正念場はこれから」だ。
 売り上げの減少などの経営リスクに対して、建設業は、特に中小建設事業者は十分な備えができているのだろうか。
 中小企業基盤整備機構が中小・小規模企業を対象にアンケート調査を行っている。感染症の再拡大などに備えて「事業継続のための準備を進めているか」と聞いたところ、7月末の時点で「準備を進めている」と回答した建設業は、わずか23・0%。この数字は、最も高かった情報通信業(44・0%)の約半分、全業種の中で最低値だった。
 コロナ禍への対応では、従業員や関係者の健康を確保することが最優先であり、現場などでも十分な感染防止対策をとることが大切だ。合わせて、売り上げを確保し、従業員の雇用や下請けなど取引先との関係の維持にも気を配らねばならない。自社の事業継続を考えるならば、従業員や下請けを守ることには、関係者の健康を守ることと同等の重みがあるはずだ。
 工事の中止・延期や売上の減少といった不測の事態にも備えたい。資金確保のための準備を怠ってはならない。すでに公的支援や金融機関からの資金調達などについては、さまざまな制度が用意されている。最新情報を収集し、関係機関などとのコミュニケーションを密にすることが大切だ。手元資金を厚くし、いざという時に資金調達できる準備を整えておきたい。会社の事業継続のためには、社会全体で急速に進むデジタル化にも的確、迅速に対応する必要がある。コロナ後の状況も見越した事業の再構築などについても検討しておいた方がいいだろう。
 長引くコロナ禍での“慣れ”や“油断”は禁物だ。中小建設業にもいま大きな変革の波が押し寄せている。想定される経営リスクや環境変化に備え、危機感を持って出来得る限りの準備を怠らずに行っておくべきだ。