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経営にSDGsの視点を 建設産業の未来

2022/1/5 

「何から取り組んでいいのか分からない」−。全国建設業協会が行ったSDGs(持続可能な開発目標)に関するアンケート調査で、多くの中小建設業が、そう答えた。回答者の6割がSDGsを「知らない」「知っているが対応は検討していない」ともいう。一方で、就活生を対象とした調査(ディスコ実施)によると、4割超の学生がSDGsへの取り組みが「志望度に影響する」と答えている。就職先を決めた理由も「社会貢献度が高い」がトップだった。建設業が抱える人材不足などの課題への対応のヒントが、ここにもあるのではないか。
 ウィズコロナ、ポストコロナと言われる新しい価値観が、急速に広がっている。その潮流の一つが2015年の国連サミットで採択されたSDGsへの取り組みだ。SDGsは「健康と福祉」「質の高い教育」「住み続けられるまちづくり」「気候変動への対応」といった17のゴールと169のターゲットで構成される。世界共通の課題に対処していくために、未来へ向けた活動が欠かせない。
 では、地域の中小建設業は何をすればいいのか。
 前出の全建の調査結果によると、多くの建設会社がSDGsへの対応に苦慮する一方で、回答者の23%が「すでに対応・アクションを行っている」と答えた。
 例えば、インフラの整備、現場の感染症対策、社員への技術研修、自然災害への対応や除雪作業などが、具体的な対応事例と言えるだろう。週休2日制の導入、女性活躍の推進、ICTの活用など、いままさに努力を重ねている多くの取り組みも、SDGsの答えとなるはずだ。
 こうした取り組みを自社に当てはめてみてほしい。振り返るまでもなく、建設会社のほとんどが、日常的にSDGsと向き合っているに違いない。「何をすればいいか分からない」とたじろぐ会社と、「すでに対応している」と胸を張る会社。その境界はSDGsへの理解であり、SDGsを企業経営に取り込もうとしているかどうかの差ではないのか。
 特にこれからの未来を生きる若い世代では、SDGsへの関心が高いという。新しい学習指導要領にも「持続可能な社会の構築の観点」が明記されている。そうした若い世代に「自分の未来を任せられる会社」であり、建設業が「未来を変えていける仕事」だと伝えることができれば、長年の懸案である人材不足の解消にも一歩近づくはずだ。
 本業である受注確保の面でも、入札の総合評価方式で加点評価を始めた公共発注者、SDGsへの対応を求める民間発注者などが現れ始めている。SDGsに取り組む中小企業を資金面で支援する金融機関もある。これからの建設企業は「SDGsに積極的かどうか」を指標に、エンドユーザーや発注者、金融機関、従業員、就職を目指す学生・生徒から選ばれるようになるだろう。
 2022年は、コロナ禍への不安を抱えたままのスタートとなった。一方で、そうした中でも新しい社会への変化はスピードを増していくに違いない。地域の中小建設業は何をすればいいのか―。その答えは、これまで取り組んできたことと大きくは変わらない。未来を脅かす地域の課題、社会や人々が求めるニーズを探り、課題解決の視点で会社の能力を生かしていく。その取り組みは、まさにSDGsの考え方にも適っている。まずはSDGsをきちんと理解し、経営の中に取り込んでいく意識を持つことが必要だ。