建滴 不動産業と地方都市再生
2017/4/3
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すでに、生産年齢人口の減少と老年人口の増加という事態に直面している地方圏などの都市は、経済・社会情勢の変化に応じた持続可能な都市構造への転換が急務となっている。にもかかわらず、まちづくりの一翼を担うべき立場の大手・中堅デベロッパーは、その多くが東京など大都市圏での事業にウエートを置き、地方圏の市場性を重視していないように見える。
2017年1月1日時点の公示地価を見る限り、三大都市圏や地方中枢都市(札幌・仙台・広島・福岡の4市)と、その他の政令市・中核市との間では地価が二極化している。それでも、地方圏における都市構造の再構築に今後どう関与していくのか、コメントを出したデベロッパーはほとんどなかった。
これまでにも多くの都市が、まちの中心部に住宅や公共施設、商業施設などの機能を集約する「コンパクトシティー」に基づくまちづくりを進めてきた。大手デベロッパーが参画したケースもあるが、今のところ大きな成果を上げたという声は聞こえてこない。
高齢化社会の象徴とも言える「シャッター通り」と化した商店街や、放置された空き家が目立つ市街地も少なくない。強引なコンパクトシティー化で投資がかさみ、借金を増やす自治体もあるという。
今こそ、再開発などによって全ての人を中心市街地に集めようとする画一的な手法ではなく、多様な地域住民の生き方を肯定する「多極ネットワーク型」のコンパクトシティーを検討するべきではないか。高齢者の単身世帯も増加し続けている。都市にとっては、希薄になりつつある地域コミュニティーの醸成に主眼を置いたまちづくりが重要だ。
そのためには、不動産業が行政や住民と一緒になって、地域ごとにふさわしいまちの将来の姿を考え、活性化への有効な手立てや知恵をもっと積極的に出していい。
多世代共生型の交流拠点や高齢者向け住宅(施設)などにしても、必ずしも足りている訳ではない。空き家など既存ストックの有効活用をもっと広げる必要がある。
「持続できる郊外住宅地」の在り方を探ることも求められる。郊外から中心市街地への移転を促した場合、旧住居をどうするのかという問題に直面する。限界集落などに近い住居では、売ることも貸すこともままならない。中心市街地への移住を求めるだけでは、結果的に地方の荒廃を進行させてしまうだけだろう。
単に住民を中心市街地に集めれば良いという話ではない。「孤独死」が社会問題化する中、地方都市における高齢者の生活の安心・安全の確保は、わが国が最優先で取り組むべき課題だ。
その解決への道のりは決して平坦ではないが、不動産業は地方の活性化にももっと積極的にコミットしてもいい。ファイナンスも含め、その持てる引き出しを生かそうとすることで、地方の市場としての可能性が見えてくるかもしれない。
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