熱中症予防 心が通う職場づくりが鍵
2017/7/8
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建設業にとって、この時期脅威となるのが熱中症だ。厚生労働省がまとめた2016年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)によると、死傷者数は462人。業種別では建設業が113人で、最も多かった。全国的に今年の夏は気温が高くなることが予想されており、熱中症による労働災害の増加が懸念される。例年、災害の約9割が7〜8月に発生しており、対策は待ったなしの状況だ。
熱中症を発症させないためには、疾病の特徴を知り、予防への対処が欠かせない。熱中症は、高温多湿な環境の中で、体内の水分・塩分が失われ、体の熱放散が不十分になり、体温調節や循環機能などの働きに障害が起こる状態をいう。症状が急に重篤にまで進行してしまうケースも見られ、それを防ぐためにも早期の適切な手当てが求められる。
現場での対策は、まず作業計画や手順を作成すること。状況次第では、思い切って作業を中止することも選択肢とされている。建設業労働災害防止協会(建災防)は、WBGT値による熱ストレスの評価に基づく作業環境管理の普及や熱中症予防指導員の育成に取り組んでいる。死傷者が減らないことを重くみた厚労省は、5月から「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開。労働者に水分や塩分の摂取を呼び掛けるだけでなく、事業場での予防管理者の選任など、管理体制の徹底を促している。
労働局が主導する安全衛生パトロールに同行した時のことを思い出す。その現場ではミストシャワーの設置や、巡回による定期的なスポーツドリンクの提供がなされ、涼しい空間づくりへの工夫が見られた。熱中症対策について元方事業者の統括安全衛生責任者から話を聞いていると、「目に見える部分の対策だけでは不十分。熱中症は、単に暑さ対策をすれば解決する問題ではない」との指摘があった。
現場で働く一人一人が十分な睡眠を取り、体に良い食事をしているか。飲酒やたばこが過ぎたり、心労を抱えたりしてはいないか。職場の安全管理だけでは解決しない課題があるという話だった。個人の嗜好(しこう)や勤務外の問題にはなかなか立ち入りづらいが、作業に従事する人たちに目を向け、健康に働ける状態をキープするために、組織として関与する必要がある。実際に健康チェックシートなどを活用し、体調管理の習慣付けに取り組む現場が増えている。
その統括安全衛生責任者は加えて「現場の人間関係、雰囲気が与える影響が大きい」とも話してくれた。できるだけ早い処置を講じる必要がある熱中症にあって、お互いのことを気にも留めないような働き方をしていては、健康障害を防ぐことは難しい。普段から声を掛け合える関係の中で、「体調がおかしい」と、仲間や職長に自然な形で告げられる環境こそが、求められている。
気温や湿度への対処だけでは、建設現場での熱中症は撲滅できない。働き手に寄り添い、今よりもう一歩踏み込んだ健康管理やメンタルヘルスへの配慮がほしい。心が通う風通しの良い職場づくりが、この夏の熱中症を防いでくれることだろう。
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